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上に求めたエネルギー運動量テンソルにより、運動方程式をゲージ不変量に対
して求めよう。まず、テンソル型摂動の運動方程式はそのままゲージ不変であ
る。エネルギー運動量テンソルについてはテンソル型摂動は非等方ストレスの
みに含まれていて、
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(J.4.127) |
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(J.4.128) |
となる。非等方ストレスは一次の摂動であるから、(一次近似で)ゲージ不変で
あり、確かに上式はそのままゲージ不変である。したがって、テンソル型摂動
の運動方程式(10.4.85)は
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(J.4.129) |
となる。ここで、3次元計量
を用いて添字を下げた。テンソル型摂動
はトレースと発散がなく重力波の自由度に対応する。上の式は重力波の膨張宇
宙における波動方程式となっている。
次にベクトル型摂動の運動方程式も上に導いたように
成分と
成分はそのままゲージ不変である。エネルギー運動量テンソルの
ベクトル型成分は
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(J.4.130) |
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(J.4.131) |
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(J.4.132) |
となる。ここで、3次元速度場
はゲージ不変ではなく、その変換を計算
すると、
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(J.4.133) |
となる.これは,空間座標のとり方が時間的に変化することによって,速度が
変わってしまうことを意味する.ベクトル型摂動に対して確かに式
(10.4.132)はゲージ不変である。そこで、ゲージ不変なベクトル型3次
元速度場を
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(J.4.134) |
で定義する。このゲージ不変量は時間一定面の慣性系からみた物質の速度に対
応する。実際、時間一定面に垂直な単位法ベクトルは摂動の一次までで、
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(J.4.135) |
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(J.4.136) |
となるから、
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(J.4.137) |
となり、最後の式は時間一定面の座標点の速度に相対的な物質の速度に対応し
ている。このゲージ不変な速度を用いて、ベクトル型摂動の運動方程式
(10.4.91)および(10.4.92)は
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(J.4.138) |
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(J.4.139) |
となる。さらに、この方程式からポテンシャル
を消去すると、
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(J.4.140) |
という式が導かれる。
最後にスカラー型摂動の運動方程式を求める。密度ゆらぎ
、速度ベク
トルのスカラー型成分
、圧力のゆらぎ
のゲージ変換は
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(J.4.141) |
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(J.4.142) |
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(J.4.143) |
となる。これより,密度ゆらぎや圧力は時間一定面のとり方による不定性があ
ることがわかる.ここで、ゲージ不変量を次のように定義する。
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(J.4.144) |
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(J.4.145) |
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(J.4.146) |
すると、ゲージ不変なエネルギー運動量テンソル
(10.4.109)-(10.4.111)はこれらの量だけで書き表せて、
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(J.4.147) |
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(J.4.148) |
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(J.4.149) |
となる。ここで,非等方ストレステンソルはトレースなしであることからスカ
ラー成分は一種類しかない.こうして,スカラー型摂動の運動方程式
(10.4.112)は
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(J.4.150) |
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(J.4.151) |
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![$\displaystyle \triangle \Phi + (\triangle + 3K) \Psi
+ 3 \left[
2 {\cal H}'
+ {\cal H}^2
\right] \Phi$](img3193.png) |
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(J.4.152) |
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(J.4.153) |
となる。ここで、
成分はトレース部分とトレースなしの部分に分
けることにより、最後の2つの式となる。
圧力
をエネルギー密度
とバリオンあたりのエントロピー
の関数と
考えて,状態方程式を
とすれば,このとき圧力のゆらぎはエ
ネルギー密度のゆらぎ
とエントロピーのゆらぎ
によ
り、
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(J.4.154) |
と表される。そこで、エントロピーのゆらぎを表す量として、
 |
(J.4.155) |
を導入すれば、この量はゲージ不変量となっていることがすぐわかる.上の方
程式の組(10.4.151)-(10.4.154)を変形して,同値な方程式の組に
表すと便利である.式(10.4.151), (10.4.152) を時間微分したも
のを使えば
や
は消去され,背景時空の式
(10.4.72)-(10.4.74)を用いて変形すると,最終的に次の力
学的方程式
および、拘束の式
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![$\displaystyle \left(\triangle + 3K \right) \Psi
= - \frac32 {\cal H}^2 \Omega
\left[
\delta^{\rm (GI)} - 3 {\cal H}(1 + w) v^{\rm (GI)}
\right]$](img3206.png) |
(J.4.158) |
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(J.4.159) |
が導かれる.最初の2式はニュートン近似の場合の線形化した連続の式および
オイラー方程式に良く似ていることがわかるだろう.力学的方程式
(10.4.157), (10.4.158)はエネルギー運動量保存則
の内容に等しい.実際,左辺の摂動
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(J.4.160) |
を計算すると,時間成分
と空間成分
はそれぞれ次の2式となる.
この式のスカラー成分をとってから,エネルギー運動量保存則
をゲージ不変量で書き直せば,式(10.4.157),
(10.4.158)に等価であることが確かめられる.
以上の式により、アインシュタイン方程式の摂動部の方程式がゲージ不変な形
に表せたが、物質のゆらぎについて他のゲージ不変量を使うこともある。例え
ば、式(10.4.159)は曲率項を除いて通常のポアソンの形をしているが、
この式のソース項を改めてゲージ不変な密度ゆらぎに取り直すこともできる:
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(J.4.163) |
この変数は,ゲージ不変摂動論を創始したバーディーンにより導入されたもの
で,バーディーンの変数という.ゲージ不変な速度はその
まま記号だけ変えて、
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(J.4.164) |
と書いておこう。そして新しい変数
を
の代わりに使うならば、方程式
(10.4.157)-(10.4.160)は多少簡単化して次のようになる。
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![$\displaystyle \Delta' - 3 w {\cal H}\Delta
= - \left(\triangle + 3K \right)
\left[ (1 + w) V - 2 w {\cal H}\Pi^{\rm (S)} \right]$](img3220.png) |
(J.4.165) |
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![$\displaystyle V' + {\cal H}V
= - \frac{{c_s}^2}{1 + w} \Delta - \Phi
- \frac{w}{1+w}
\left[
\Gamma + \frac23 (\triangle + 3K) \Pi^{\rm (S)}
\right]$](img3221.png) |
(J.4.166) |
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(J.4.167) |
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(J.4.168) |
この連立微分方程式においては,
,
の形が与えられれば,
,
,
,
について解けることになる.密度ゆらぎの成
長に対応する方程式として,上式から
,
,
を消去すること
により,
と導ける.この式はエントロピーゆらぎと非等方ストレスが与えられたときに,
それらをソース項とする密度ゆらぎの二階常微分方程式になっている.これが
解ければ,その解を用いて
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(J.4.170) |
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(J.4.171) |
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(J.4.172) |
と求まることになる.ここで,
は演算子
のグリーン関数を表している.
どのようなゲージ不変量を独立な変数として取るかには任意性がある.密度ゆ
らぎなどはゲージ依存する量なので,それらになるべく近い不変量を定義した
ものが
,
などである.以下に見るように,これ
らの不変量は特別なゲージのもとで実際の密度ゆらぎなどになっている.
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