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索引
トムソン散乱は偏極を生むので,偏極の自由度を考慮すると光子のゆらぎの発
展方程式上で導いた式から補正される.このことは式
(9.4.191)-(9.4.193)で表されたストークス・パラメータ
のトムソン散乱に
よる時間変化を見るとわかる.すなわち,光の強度を表す
の変化は直線偏
光を表す
の値に依存し,両者の時間発展はお互いに影響を及ぼし合う
形となっている.
いま,放射場の空間的な平均エネルギー密度を
とする.
非摂動宇宙では光子の平均的な偏光はないから,ストークス・パラメータは
,
となる.そこで,
ストークス・パラメータのゆらぎ成分として
| |
|
![$\displaystyle I({\mit\Omega}) = \frac{c\bar{\rho}_\gamma}{4\pi}
\left[1 + 4{\mit\Theta}_I({\mit\Omega})\right]$](img4035.png) |
(L.4.184) |
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|
 |
(L.4.185) |
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(L.4.186) |
により,ストークスパラメータの摂動
,
,
を導入する.そして以下これらのパラメータは線形項まで残す.
ここで導入された
は式(12.4.168)で定義された輝度関数と
同じものである.これを見るためには,放射場のエネルギー密度は式
(10.8.272) により偏極の自由度を考慮して,
 |
(L.4.187) |
となることに注意する.この運動量積分への単位立体角あたりの寄与が強度
(を
で割ったもの)になることから,式(12.4.168)で定義される
により
 |
(L.4.188) |
となって,式(12.4.187)と一致する.
ストークス・パラメータの変化率の式(9.4.191)-(9.4.193)
により,これらゆらぎのパラメータの変化率は電子の静止系における局所座標
において
| |
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![$\displaystyle \left.
\frac{d{\mit\Theta}_I}{d\tau}
\right\vert _{\rm Th} =
a n_...
...Q 2} + {\mit\Theta}^{-(m)}_{Q 2}
\right)
\right]
Y_2^m({\mit\Omega})
\right\}$](img4043.png) |
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(L.4.189) |
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![$\displaystyle \left.
\frac{d{\mit\Theta}^\pm_Q}{d\tau}
\right\vert _{\rm Th} =
...
...a}^{-(m)}_{Q 2}
\right)
\right]
{{ }_{\pm 2}Y_{2}^{m}}({\mit\Omega})
\right\}$](img4044.png) |
(L.4.190) |
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(L.4.191) |
ただし単位共形時間あたりの変化率に直し,摂動ストークス・パラメータの展
開
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(L.4.192) |
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(L.4.193) |
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(L.4.194) |
を用いた.
上の表式は電子の静止系におけるものであるから,一般の時空座標系へ戻して
やる必要がある.その変換は摂動の1次であるから,もともと非摂動部を持た
ないストークス・パラメータ
は摂動の1次ではその変換によって変化
することはない.一方,ストークス・パラメータ
は非摂動部を持っている
ので,変換を受ける.このパラメータは光の強度であり,光子のエネルギーの
4乗に比例する.したがって,光子のエネルギーの変換を求めればよいことに
なる.時空座標におけるバリオンの速度を
とす
ると,その4元速度は式(10.4.114)により
 |
(L.4.195) |
である.また,式(10.8.254)のテトラード上での光子のエネルギーを
とすると,式(10.8.260), (10.8.261)より一般座標での光子
の4元運動量は
 |
(L.4.196) |
となる.ただし,
は光子の進行方向を向いた単位ベクトルである.した
がってバリオン静止系での光子のエネルギーを
とすると,
![$\displaystyle \tilde{p} = - a P^\mu u_\mu = p \left[ 1 - n^i \left(v_{{\rm b}i} - B_i\right)\right]$](img4054.png) |
(L.4.197) |
となる.これはドップラー効果と座標のシフトによって生じる光子のエネルギー
偏移を表している.したがって,強度の変換は
![$\displaystyle \tilde{I} = I \left[ 1 - 4 n^i \left(v_{{\rm b}i} - B_i\right)\right]$](img4055.png) |
(L.4.198) |
となるので,ゆらぎの変換は
 |
(L.4.199) |
となる.この変換は双極子成分しか持たないので,式
(12.4.192)-(12.4.194)の中では
,
の項は変換を受けない.したがって,式
(12.4.192)のみを
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| |
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![$\displaystyle \qquad\qquad\qquad\qquad +
\frac{1}{10} \sum_m
\left[
{\mit\The...
...Q 2} + {\mit\Theta}^{-(m)}_{Q 2}
\right)
\right]
Y_2^m({\mit\Omega})
\Biggr\}$](img4060.png) |
(L.4.200) |
と変更すればよく,式(12.4.193), (12.4.194)はそのまま一
般の座標で成り立つ.
次に,この式をゲージ不変量で表すことを考える.まず,スカラー摂動につい
ては
のゲージ不変量は式(12.4.171)で与えられる
である.このとき,ゲージ変換は単極成分と双極成分しか持たない
から,
,
となる.また,
のゲージ不変量は
式(12.4.165)で与えられる
である.こうして,
となる.これがゲージ不変量で表した輝度関数のトムソン散乱による衝突項で
ある.他のストークス・パラメータ
,
は非摂動項を持たないので,
,
は線形近似ではそのままゲージ不変となり,式
(12.4.193), (12.4.194)はそのままゲージ不変である.ここ
で,式(12.4.193)の
は
に
そのまま置き換えることができる.
この輝度関数の変化率はボルツマン方程式における衝突項として作用し,実際,
式(12.4.204)を式(12.4.177)の右辺と比べてみれば,その類似
性は明らかである.だが,偏光による寄与が余計に付け加わっており,正確に
は衝突項に偏光を取り入れるべきであったことを示している.したがって,輝
度関数の発展方程式はフーリエ空間で,
となる.一方,他のストークス・パラメータは非摂動部を持たないので,式
(10.8.291)のボルツマン方程式において重力場の摂動とは一次近似の範
囲では結合することがない.したがって,式(12.4.193),
(12.4.194)の衝突項はそのまま光の進行に沿ったラグランジュ微分に
等しく,その発展方程式は
となる.
ここで,円偏光を表すストークス・パラメータ
の発展方程式
(12.4.207)は他の変数と独立な方程式になっている.これはトムソン
散乱によっては円偏光が発生しないことに対応している.したがって,もし宇
宙の初期条件として円偏光が存在しなければ,その後も円偏光はないままにと
どまる.そこで以降は円偏光ははじめからないものとして考えない.
ここでまた各モードにおいて初期条件の軸対称性により,
依存性は
を通じてのみであるとする.量
に対しては式(12.4.178)のルジャンドル展開を考え,量
についても同様に
 |
(L.4.203) |
とする.すると式(12.4.195), (12.4.196)は
を
軸とする座標系で計算することにより,
となる.ただし,スピン球面調和関数の具体形,
![$\displaystyle Y_l^0(\theta,0) = \sqrt{\frac{2l+1}{4\pi}} P_l(\cos\theta), \quad...
...{0}}(\theta,0) = \frac12 \sqrt{\frac{5}{6\pi}} \left[1 - P_2(\cos\theta)\right]$](img4081.png) |
(L.4.206) |
およびルジャンドル多項式の直交性
 |
(L.4.207) |
を用いた.すると式(12.4.205), (12.4.206)が簡単になる.
ここで
基底から
,
基底に戻すことにより,これらの式は
| |
|
![$\displaystyle {\mit\Theta}' + ik\mu{\mit\Theta}+ ik\mu{\mit\Phi}+ {\mit\Psi}' =...
...+ {\mit\Theta}_{{\rm P} 0} + {\mit\Theta}_{{\rm P} 2}\right)
P_2(\mu)
\right]$](img4083.png) |
|
| |
|
|
(L.4.208) |
| |
|
![$\displaystyle {{\mit\Theta}_{\rm P}}' + ik\mu{\mit\Theta}_{\rm P} =
a n_e \sigm...
...rm P} 0} + {\mit\Theta}_{{\rm P} 2}\right)
\left[1 - P_2(\mu)\right]
\right\}$](img4084.png) |
(L.4.209) |
| |
|
 |
(L.4.210) |
となる.ただし,
 |
(L.4.211) |
である.すると,ストークス・パラメータ
も他の変数と独立な発展方程式
に従っているので,結局最初の2式(12.4.213), (12.4.214)
のみが重力ポテンシャルと光のゆらぎの結合した発展方程式となっている.式
(12.4.213)は偏極を無視したときの式(12.4.181)に対応する.
つまり,偏極自由度のうちストークス・パラメータ
の成分は光のゆらぎの
発展と結合し,それを通じて間接的に重力自由度とも結合しているのである.
式(12.4.213), (12.4.214)から前節と同様にルジャンドル展
開係数の満たす方程式系を求めると,
| |
|
 |
(L.4.212) |
| |
|
 |
(L.4.213) |
| |
|
 |
(L.4.214) |
| |
|
![$\displaystyle {{\mit\Theta}_l}' -
\frac{k}{2l+1} \left[ l {\mit\Theta}_{l-1} ...
...\Theta}_{l+1}\right] =
- a n_e \sigma_{\rm T} {\mit\Theta}_l,
\quad (l \geq 3),$](img4088.png) |
(L.4.215) |
| |
|
![$\displaystyle {{\mit\Theta}_{{\rm P} l}}' -
\frac{k}{2l+1}
\left[
l {\mit\Theta}_{{\rm P} l-1} - (l+1){\mit\Theta}_{{\rm P} l+1}
\right]$](img4089.png) |
|
| |
|
![$\displaystyle \qquad =
- a n_e \sigma_{\rm T}
\left[
{\mit\Theta}_{{\rm P} l} ...
...a}_{{\rm P} 2}\right)
\left(\delta_{l0} + \frac{\delta_{l2}}{5}\right)
\right]$](img4090.png) |
(L.4.216) |
となる.ここで,
である.
次にテンソル型摂動を考える.テンソル摂動はそのままゲージ不変なので、ゲー
ジ自由度を考える必要はない.式(10.8.298)を積分して輝度関数
(12.4.168)のテンソル型成分
の方程式を求めれば,
 |
(L.4.217) |
となる.また,他のストークス・パラメータに対する方程式は式
(12.4.206), (12.4.207)をそのままテンソル成分を取ったも
ので与えられる.
ここで,右辺の衝突項は式(12.4.203)のテンソル成分で与え
られる.この式では,左辺第3項の存在によりフーリエモードについて緯度方
向
のみの関数というわけではなくなり,経度
方向
にも依存する.だがその依存性は以下に見るように比較的簡単で
ある.式(11.3.118)-(11.3.121)で考えたように,テンソル
成分をプラス偏極
およびクロス偏極
の基底で
分解することができる.そこで,フーリエモード
を
次のように分解する:
 |
(L.4.218) |
この基底は
を
軸とする座標系において式(11.3.121),す
なわち,
 |
(L.4.219) |
で与えられる.この座標系において,
の球座標を
とする
と,
![$\displaystyle n^i n^j C^{(T)}_{ij}({\mbox{\boldmath$k$}}) = \frac{\sin^2\theta}...
...ldmath$k$}}) \cos 2\phi + C^{(\times)}({\mbox{\boldmath$k$}})\sin 2\phi \right]$](img4100.png) |
(L.4.220) |
という角度依存性となる.このプラス偏極とクロス偏極は独立なモードであり,
光子ゆらぎの解は各モードに対する解
,
の重ね合わせとなる.ストークス・パラメータ
,
の発展も結合しているので,これらについても同様
の重ね合わせで表される.すると,次の変数変換
| |
|
 |
(L.4.221) |
| |
|
 |
(L.4.222) |
| |
|
 |
(L.4.223) |
により,新たな変数
,
,
を導
入すると方程式が簡単化するL1.このとき
依存性は方程式にあらわに現れないように
選んである.このため,初期条件に
依存性がないとするとこの新変数は
のみの関数と考えることができる.スピン調和関数の具体形を用いてト
ムソン散乱の衝突項(12.4.204), (12.4.193),
(12.4.194)を計算するとどちらのモード
につい
ても同じ形となり,発展方程式(12.4.222), (12.4.206),
(12.4.207)のテンソル型成分は,
| |
|
 |
(L.4.224) |
| |
|
 |
(L.4.225) |
| |
|
 |
(L.4.226) |
| |
|
![$\displaystyle \tilde{{\mit\Lambda}}^{(\lambda)} \equiv
\frac{3}{32}
\int_{-1}^1...
...\mit\Theta}}_Q^{(\lambda)} -
4 \mu^2 \tilde{{\mit\Theta}}_U^{(\lambda)}
\right]$](img4114.png) |
(L.4.227) |
となる.ここで,式(12.4.230)から式(12.4.231)を引い
た
の方
程式はソース項を持たずに独立した方程式となる.したがってトムソン散乱に
よってこの自由度は発生しない.そこではじめからこの自由度は消えているも
のとすれば,
 |
(L.4.228) |
となる解を考えればよいことになる.すると発展方程式はモード
に対して同様の形となり,
| |
|
 |
(L.4.229) |
| |
|
 |
(L.4.230) |
| |
|
 |
(L.4.231) |
となる.ここで,最後の
の定義式において,
右辺は(12.4.178), (12.4.208)と同様のルジャンドル展開の係
数である.第一の式(12.4.234)は計量のテンソル摂動と結合している
ので,その発展方程式を用いることで方程式が閉じる.それは式
(10.4.85)で与えられる.ソース項を無視するならばL2,
 |
(L.4.232) |
に従う.これらの発展方程式の解を数値的に求めるには同様にルジャンドル展
開によって得られる連立した階層方程式を用いる.
Footnotes
- ...
入すると方程式が簡単化するL1
- A. G. Polnarev, Sov. Astron. 29, 607 (1985)
- ...eq9-27a)で与えられる.ソース項を無視するならばL2
- この方
程式にはソース項としてニュートリノと光子の非等方ストレスのテンソル型成
分が寄与するが,それは常に左辺に比べて小さいので無視することができる.
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