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光子のボルツマン方程式は質量なしのニュートリノの場合と同様に取り扱える
が,おもに電子との間の相互作用があるため衝突項を入れる必要がある.また,
その相互作用は光子の偏極に依存するため,その自由度も考慮する必要がある.
偏光を含んだより正確な取り扱いは次の節で行うことにして、ここでははじめ
に,偏極を無視する簡単化した近似で考えてみる.光子の衝突項は局所座標で
式(9.3.80)に与えられる.その表式は実際に流れる固有時間あたりの
衝突確率を用いて導いたので,いま共形時間を用いた衝突項にするため
を
かける必要がある.こうして一般座標での単位共形時間による衝突項は,
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![$\displaystyle C_\gamma \left[f({\mbox{\boldmath$p$}})\right] =
\frac{a}{2c}
\in...
...i}_{p'}
(2\pi\hbar)^4 \delta^4(p + q - p' - q')
\left\vert{\cal M}\right\vert^2$](img3958.png) |
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![$\displaystyle \qquad\qquad\qquad\qquad
\left\{
f({\mbox{\boldmath$p$}}') g({\mb...
...}}) g({\mbox{\boldmath$q$}})\left[1 + f({\mbox{\boldmath$p$}}')\right]
\right\}$](img3959.png) |
(L.4.147) |
となる.ここで,
,
はそれぞれ光子および電子の分布関数であり、スピ
ンと偏極について平均されたものである.古典統計を仮定し,
,
と近似してある.また,分布関数は時空に依存している
が,いまその引数
は省略して書いている.運動量変数として
は節10.8で行ったように,式(10.8.254)で与えられるテトラー
ド上のものを用いる.すると積分測度は式(10.8.270) と同様に
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(L.4.148) |
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(L.4.149) |
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(L.4.150) |
で与えられる.ここで,
,
,
である.また,最初の2式の近似は電子の運動が非相対論的であるというトム
ソン散乱の近似
である.デルタ関数の部分は質量殻の
条件(10.8.257)と,同じくトムソン散乱の近似により,
となる.したがって,衝突項は
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![$\displaystyle C_\gamma[f({\mbox{\boldmath$p$}})] =
\frac{3}{8\pi} \frac{\sigma_...
...p'}\right)^2\right]
\delta\left(p - p' + \frac{q^2 - q'^2}{2m_{\rm e}ca}\right)$](img3972.png) |
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![$\displaystyle \qquad\qquad\quad \times
\delta^3({\mbox{\boldmath$p$}} - {\mbox{...
...}}) g({\mbox{\boldmath$q$}})\left[1 + f({\mbox{\boldmath$p$}}')\right]
\right\}$](img3973.png) |
(L.4.152) |
となる.この式は本質的に式(9.3.85)と同じであり,違いは運動量の
規格化の違いにより現れるスケール因子,および分布関数が非等方な場合を含
んでいることである.ここで
の積分はデルタ関数によりただちに実
行できる.ここでトムソン散乱の近似では
,
であることを
用いて変形する.この近似の一次まで取ることにより,最初のデルタ関数の部
分は
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(L.4.153) |
となる.ここでデルタ関数の展開は部分積分をするときにのみ意味のある操作
であることに注意しておく.最後の分布関数の部分は
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![$\displaystyle f({\mbox{\boldmath$p$}}') g({\mbox{\boldmath$q$}} + {\mbox{\boldm...
...ldmath$p$}}) g({\mbox{\boldmath$q$}})\left[1 + f({\mbox{\boldmath$p$}}')\right]$](img3977.png) |
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![$\displaystyle \qquad
\simeq g({\mbox{\boldmath$q$}})\left[f({\mbox{\boldmath$p$...
...math$q$}}}
f({\mbox{\boldmath$p$}}')\left[1 + f({\mbox{\boldmath$p$}})\right]$](img3978.png) |
(L.4.154) |
となる.したがって,トムソン散乱の一次までの近似で,
| |
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![$\displaystyle C_\gamma[f({\mbox{\boldmath$p$}})] =
\frac{3}{8\pi} \frac{\sigma_...
...t(\frac{{\mbox{\boldmath$p$}}\cdot{\mbox{\boldmath$p$}}'}{p p'}\right)^2\right]$](img3979.png) |
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![$\displaystyle \qquad\qquad\quad \times
\left[
\delta(p-p') - \frac{{\mbox{\bold...
...dmath$q$}})
\left[
f({\mbox{\boldmath$p$}}') - f({\mbox{\boldmath$p$}})
\right]$](img3980.png) |
(L.4.155) |
となる.ここで式(12.4.153)の右辺第2項の1次の項への寄与は
積分の表面積分になって消え,2次の項への寄与はいま無視してい
るので,ここには残らない.
ここで,
積分を実行することができる.この変数は式
(10.8.254)のテトラード上で定義される変数であるから,もとの変数
で表し直すことにより,式(10.8.255), (10.8.256)およ
び(10.8.260)を用いて摂動の最低次において次のようになる:
ただし,
 |
(L.4.158) |
は電子の数密度,
 |
(L.4.159) |
はバリオンの速度場である.電子はバリオンとクーロン相互作用により強く結合
して速度場が共通であると仮定し,この速度場は電子の速度場と同一であると
考える.
分布関数の摂動展開を
 |
(L.4.160) |
とする.ここで,
である.
この表式では時空の依存性をあらわに表しているが,以下では再び省
略する.式(12.4.155)を計算することにより,
| |
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![$\displaystyle C_\gamma[f({\mbox{\boldmath$p$}})] =
\frac{3}{16\pi} \frac{n_e \s...
...ega}_{n'} \left[1 + ({\mbox{\boldmath$n$}}\cdot{\mbox{\boldmath$n$}}')^2\right]$](img3988.png) |
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![$\displaystyle \qquad\qquad\qquad\qquad\qquad \times
\left[
\delta f(p,{\mbox{...
...t({v_{\rm b}}^i - B^i \right) n_i
p \frac{\partial \bar{f}}{\partial p}
\right]$](img3989.png) |
(L.4.161) |
となる.
ここからわかるようにこの衝突項は線形摂動であり,非摂動項は含まれていな
い.したがって
 |
(L.4.162) |
であり,非摂動ボルツマン方程式(10.8.267)は
 |
(L.4.163) |
となる.すなわち,光子の非摂動分布関数は時間的に一定となる.衝突項の非
摂動項が消えることから,式(10.8.292)のゲージ不変な衝突項
はそのまま式(12.4.161)のスカラー成分に等しくなる.
式(10.8.290)のゲージ不変な分布関数はいま光子の場合,
| |
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![$\displaystyle \qquad\qquad\qquad\qquad -\;
\left[{\cal H} \left(B^{\rm (S)} + {...
... (S)} + {C^{\rm (S)}}'\right)_{,i}\right]
p \frac{\partial \bar{f}}{\partial p}$](img3994.png) |
(L.4.164) |
であり,ゲージ不変なバリオンの速度場は式(10.7.235)により,
 |
(L.4.165) |
であるから,ゲージ不変な衝突項は
と表され,確かにゲージ不変量だけで表されている.この衝突項によりゲージ
不変なボルツマン方程式(10.8.291)は
となる.ここで,
は空間微分を表す.
ここで,次の輝度関数(Brightness function)
 |
(L.4.166) |
を定義する.この関数は温度ゆらぎに対応する量である.というのは,平衡状
態の分布関数
 |
(L.4.167) |
(
は
,
に依らない因子)の場合,
 |
(L.4.168) |
となるが,これを式(12.4.168)に代入すると
となるからである.この輝度関数のゲージ不変量を
で定義する.
ボルツマン方程式(12.4.167)を積分すると,この輝度関数の方程式と
して,
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![$\displaystyle \qquad =
\frac{3}{16\pi} a n_e \sigma_{\rm T}
\int d{\mit\Omega}_...
...') - {\mit\Theta}({\mbox{\boldmath$n$}}) +
n^i v^{\rm (GI)}_{{\rm b},i}
\right]$](img4009.png) |
(L.4.170) |
を得る.右辺を評価するため,積分されている輝度関数を球面調和関数
で展開する:
 |
(L.4.171) |
また,ルジャンドル多項式
,
を用いると,
 |
(L.4.172) |
とかけるが,ルジャンドル多項式は球面調和関数の和則
 |
(L.4.173) |
によってさらに展開できる.これらの式を式(12.4.172)に入れてさら
に球面調和関数の直交関係
 |
(L.4.174) |
を用いて計算することにより,
となる.ただし,フーリエ空間へ移り,
,
に省略
されている空間依存性は
依存性へと変更した.また,
である.また
であ
る.この式が光子のゆらぎの発展方程式となる.
ニュートリノの場合にも考えたように,
の
依存性は
を通じてのみ入っていると考えることができる.そこで次のルジャンドル展開
 |
(L.4.175) |
を考える.このとき多重極展開の係数
は式
(12.4.175), (12.4.176)を用いて
 |
(L.4.176) |
となる.ただし
である.さらにまた式
(12.4.175)を使えば,
 |
(L.4.177) |
となるので,式(12.4.177)は
![$\displaystyle {\mit\Theta}' + i k \mu {\mit\Theta}+ i k \mu {\mit\Phi}+ {\mit\P...
...\Theta}+ i k \mu v^{\rm (GI)}_{\rm b} - \frac12 P_2(\mu) {\mit\Theta}_2 \right]$](img4025.png) |
(L.4.178) |
となる.この式は質量なしのニュートリノの式(12.4.122)に対応するも
ので,いま衝突項が付いていて,変数の定義が
だけ異なっている.あと
は同様にルジャンドル展開係数の発展方程式を導くことができる.式
(12.4.126)に対応して低次の係数は
 |
(L.4.179) |
と巨視的変数で表される.さらに多重極の係数の満たす方程式は
| |
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(L.4.180) |
| |
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(L.4.181) |
| |
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(L.4.182) |
| |
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![$\displaystyle {{\mit\Theta}_l}' -
\frac{k}{2l+1} \left[ l {\mit\Theta}_{l-1} ...
...\Theta}_{l+1}\right] =
- a n_e \sigma_{\rm T} {\mit\Theta}_l,
\qquad (l \geq 3)$](img4031.png) |
(L.4.183) |
となる.この式から光子ゆらぎの時間発展を数値的に追うことができる.
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