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2成分系のゆらぎの成長
2成分系のゆらぎの進化を調べる.ここでは簡単のため,成分間には相互作用
がなく,各成分のエントロピーゆらぎ
,非等方ストレス
が
無視できるものとする.この場合,成分ごとのゆらぎを考えるかわりに,全ゆ
らぎとエントロピーのゆらぎを考えると便利である.いま,2成分
,
の
みが存在する場合を考えると,任意のゲージにおける成分ごとの密度ゆらぎ
,
は全ゆらぎ
とエントロピー摂動
と
の間に,
の関係がある.全ゆらぎ
の進化はバーディーン変数に対して式
(10.4.170)により記述される.十分初期の宇宙を考え,アインシュタイ
ン・ドジッター宇宙で近似されるものとしよう.するといまの場合,
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(L.3.65) |
という形になる.ここで,全体のエントロピーゆらぎは
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(L.3.66) |
で与えられる.エントロピー摂動
の進化は式(10.7.244)と式
(10.7.246)を組み合わせて記述される.いまの場合,それらの式は
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(L.3.67) |
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(L.3.68) |
となる.ここで,
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(L.3.69) |
である.したがって,エントロピー摂動の発展方程式は
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(L.3.70) |
となる.
これらの式から分かるように,一般に密度ゆらぎとエントロピーゆらぎの成長
は独立ではなく,両者は結合している.だが,その結合の項には
がかかっ
ているので,長波長極限
では独立に成長することがわかる.
系の時間変化のオーダーは長さにしてホライズンスケールであるから,このこ
とはすなわち,ホライズンよりも十分大きなスケールのゆらぎは密度ゆらぎと
エントロピーゆらぎが独立な成長をすることを意味している.さらにこの極限
では,式(12.3.67)により,エントロピー摂動
がほぼ一定に保
たれる.宇宙初期へ遡ればどのスケールもホライズンよりも十分大きくなると
考えられるので,初期条件としてエントロピーゆらぎと全密度ゆらぎを独立に
与えることができる.このことから初期ゆらぎは2種類に分類されて,エント
ロピーゆらぎがなく全密度ゆらぎのみの断熱ゆらぎ,逆に全密度ゆらぎ
がなくエントロピーゆらぎのみの等曲率ゆらぎに分けられる.これらの
名前の示す性質はゆらぎが超ホライズンスケールにとどまる間保たれ,独立な
モードと考えることができるので,一般解を両者の重ね合わせと考えてよい.
ホライズンスケールに入ってくれば両者の時間発展は混合し,そのような扱い
はできない.
現実に近い具体的な系として,コールドダークマターと輻射の混在する場合を
調べてみよう.これにより一成分系の近似では分からなかった,等密度時前後
のホライズンスケールまたはそれ以下のスケールのゆらぎのふるまいについて
の知見が得られる.ここで,時間変数の代わりに等密度時を基準としたスケー
ル因子
を用いると便利である.また,等密度時にお
けるダークマターと輻射の密度の和の一様成分を
とす
る.ダークマターのエネルギー密度は
とスケールするので,ダークマターに関する物理量の一様成分は
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(L.3.71) |
また,輻射については
のスケールと
により,
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(L.3.72) |
となる.したがって,全体の物理量としては
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(L.3.73) |
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(L.3.74) |
となる.さらに,等密度時のハッブルパラメータを
とすれば,等
密度時のホライズンスケールは
で与えられる.すると,式(3.3.41), (3.4.43)により
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(L.3.75) |
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(L.3.76) |
となる.ここで,等密度時におけるフリードマン方程式(3.3.40)を使う
と,式(3.3.41)および
により,
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(L.3.77) |
と表すこともできる.
以下,エントロピー摂動を
と省略して書く.
式(10.7.240)で与えられる共動ゲージにおける成分ごとのゆらぎの組
と,全密度ゆらぎとエントロピー摂動
の組
との間の関係を求めれば,
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(L.3.78) |
となり,全エントロピーのゆらぎは
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(L.3.79) |
で与えられる.ここで,エントロピー摂動
はエントロピー密度
あたりの
ダークマターの数密度
のゆらぎに等しいことを注意しておく.実際,エントロ
ピーはほとんどが放射によって担われていることと,
,
であることから,
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(L.3.80) |
となる.
はゲージ不変なので,上式は
そのものである.ゆらぎの発展の
式を書き下すのに,微分演算子
を用いる
と便利である.このとき,コンフォーマル時間に関する微分は
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(L.3.81) |
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(L.3.82) |
となる.また,スケール
を等密度時にちょうどホライズンサイズとなるス
ケール
で規格化したスケール
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(L.3.83) |
を用いる.その結果,式(12.3.65), (12.3.70)は
となる.この式は多少複雑で,一般解は解析的に求まらないが,数値的に求め
ることは容易である.初期条件として
をとれば断熱ゆらぎ,
をとれば等曲率ゆらぎの発展を計算できるが,前に述べたように,これらの
発展はホライズンスケールに入ると独立ではない.したがって,ホライズンス
ケールをまたぐ時間発展において両者を別々に扱うことはできない.だが,初
期ゆらぎの性質は現在よくわかっていないダークマターの詳細に依存するので,
通常は簡単のため,どちらか一方のゆらぎを調べることが多い.
ここまでに簡単に調べられた極限的な場合でアインシュタイン・ドジッター宇
宙の場合の情報はすべてこの式に含まれている.この式の極限をとることによ
り,ここまでに見た単純な取り扱いのできた場合を含めてその振る舞いを系統
的に見てみよう.
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