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超ホライズンスケールのゆらぎ

まず,放射優勢期から物質優勢期を通じて,ホライズンの外にとどまっている 超ホライズンスケールのゆらぎの振る舞いを調べる.これは, $ \omega \ll 1$ の極限をとることで調べることができる.上に述べた通り,密度ゆらぎとエン トロピー摂動は独立な成長をする.超ホライズンスケールの密度ゆらぎの方程 式は,

    $\displaystyle {\cal D}^2 \Delta +
\left(\frac52 \frac{y}{y+1} - \frac{3y}{3y+4} - 1\right)
{\cal D}\Delta$  
    $\displaystyle \qquad\qquad
+ \;\left(\frac{3y}{y+1} + \frac{y^2}{2(y+1)^2} -
\frac{9y}{3y+4} - 2\right) \Delta = 0$ (L.3.86)

となるが,この式は密度ゆらぎを $ \Delta = y^{-1} (y+1)^{-1/2} u$ とおくこ とにより容易に積分できる形

$\displaystyle {\cal D}^2 u + \left(\frac32 \frac{y}{y+1} - \frac{y}{y+4/3} - 3 \right) {\cal D}u = 0$ (L.3.87)

となり,あとは直線的に解析解を求めることができる.その結果,$ \Delta$ に ついての独立な2解として,

$\displaystyle \frac{y^2}{y+1} \left[ 1 + \frac29 \frac{3+\sqrt{y+1}}{\left(1 + \sqrt{y+1}\right)^3} \right], \quad \frac{1}{y\sqrt{y+1}}$ (L.3.88)

が求められる.ここで,第一の解は放射優勢期$ y \ll 1$ $ \sim y^2$ ,また, 物質優勢期$ y \gg 1$ $ \sim y$ と振る舞い,いずれの時期でも成長 解になっている.これに対して第二の解は減衰解である.この成長解に対して, ポテンシャル

$\displaystyle {\mit\Phi}= - {\mit\Psi}= -\frac34 \frac{y+1}{\omega^2 y^2} \Delta$ (L.3.89)

は放射優勢期の極限$ y \ll 1$ ,物質優勢期の極限$ y \gg 1$ でいずれも一定値 を取ることがわかるので,ポテンシャルの初期値に対応する,放射優勢期の一 定値を $ {\mit\Phi}_0$ とおくことにより成長解の振幅が定まる.その結果と漸近形は,
    \begin{displaymath}\Delta = - \frac{6\omega^2}{5} {\mit\Phi}_0
\frac{y^2}{y+1}
\...
...\frac65 \omega^2 {\mit\Phi}_0 y, & (y \gg 1)
\end{array}\right.\end{displaymath} (L.3.90)
    \begin{displaymath}{\mit\Phi}= \frac{9 {\mit\Phi}_0}{10}
\left[ 1 +
\frac29 \fra...
...style
\frac{9}{10} {\mit\Phi}_0, & (y \gg 1)
\end{array}\right.\end{displaymath} (L.3.91)

という形となる.一成分系の接続解で導かれた,ポテンシャルが等密度時をは さんで値が$ 9/10$ 倍になるという結果は等密度時前後の時間発展を正確に扱っ ても全く同じである.

次に,エントロピー摂動の方程式は

$\displaystyle {\cal D}^2 S + \left( \frac{y}{2(y+1)} - \frac{3y}{3y+4} \right) {\cal D}S = 0$ (L.3.92)

となるが,これはすぐに積分できて,独立な2解は

$\displaystyle 1,\quad \arctan\sqrt{3(y+1)} - \sqrt{3}\arctan\sqrt{y+1}$ (L.3.93)

である.第一の解は定数である.第二の解は放射優勢期の極限$ y \ll 1$ ,物 質優勢期の極限$ y \gg 1$ ともに一定値に近付いているが,その値は等密度時 をはさんで変化している.だが,エントロピー摂動が超ホライズンスケールで 変化するのは奇妙である.なぜなら,エントロピー摂動はエントロピーあたり のダークマターの粒子数のゆらぎであり,この量は熱伝導がない限り一定値を とるからである.超ホライズンスケールでの熱伝導はありえないので,エント ロピー摂動の変化は因果律に反する.このことは次のようにも理解できる.式 (12.3.67)から,

$\displaystyle {\cal D}S_{\rm mr} = \frac{2y^2 \omega^2}{y+1} {\cal H}v_{\rm mr}$ (L.3.94)

となるので,超ホライズンスケールでのエントロピー摂動の時間変化は $ v_{\rm mr} \gg {\cal H}^{-1}$ を要求するが,これは超ホライズンスケールの 運動をすることを意味するので,因果律に反することになる.したがって,因 果律を満たすエントロピー摂動は一定値をとる解のみである.この一定値を $ S_0$ と書くことにする.

以上をまとめると,超ホライズンの一般のゆらぎはポテンシャル一定の密度ゆ らぎと,エントロピー摂動一定のゆらぎを独立なモードとする重ね合わせで表 される.ポテンシャルは等密度時をはさんで$ 9/10$ 倍になるが,エントロピー 摂動は等密度時前後でも同じ一定値を取り続ける.

等曲率ゆらぎの場合は,はじめは$ \Delta=0$ でも,式(12.3.84)の左辺 のエントロピー摂動の項をソース項として,少しずつ成長する.超ホライズン スケールの極限を考えているので,$ S$ が一定であって$ \Delta$ の成長と関係 なければ,強制項を持つ線形微分方程式となるので,斉次方程式の解からグリー ン関数を作る方法によりこの式の解析解を求めることができる.その結果と漸 近形は

$\displaystyle \Delta = \frac{4}{15} S_0 \omega^2 \frac{3y^2 + 22y + 24 + 4(3y +...
...)  \displaystyle \frac{4}{15} S_0 \omega^2 y, & (y \gg 1) \end{array} \right.$ (L.3.95)

となる.等曲率ゆらぎの超ホライズンスケールでは $ \Delta \ll \vert S\vert$ である. このようにして,一定のエントロピーゆらぎから密度ゆらぎが生成されること になる.


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