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宇宙年齢

スケール因子がゼロから出発する,ビッグバンのある宇宙モデルでは,宇宙に 始まりがあるため,宇宙の年齢が定義できる.宇宙の年齢が$ t$ の時点で天体 を出発した光は赤方偏移が$ z$ となって観測される.この2つの量の関係 $ t(z)$ は次のようになる:

$\displaystyle H_0 t$ $\displaystyle =$ $\displaystyle H_0 \int_0^t dt
= H_0 \int_0^a \frac{da}{\dot{a}}
= H_0 \int_z^\infty \frac{dz}{(1 + z) H(z)}$ (C.6.72)
  $\displaystyle =$ $\displaystyle \int_z^\infty
\frac{dz}
{(1+z)\sqrt{(1+z)^2
+ z(1+z)^2 {\mit\O...
...+ z(2+z)(1+z)^2 {\mit\Omega}_{\rm r0}
- z(2+z) {\mit\Omega}_{{\mit\Lambda}0}}}$ (C.6.73)

最後の形(3.6.73)からは宇宙パラメータへの依存性がわかる.すなわ ち,物質の密度 $ {\mit\Omega}_{\rm m0}$ が増えれば,固定した$ z$ について宇宙年 齢が小さくなる.これは物質による重力による減速がより強く効くため,現在 の膨張率を$ H_0$ で固定したとき,年齢が小さくなることに対応している.ま た,宇宙定数 $ {\mit\Omega}_{{\mit\Lambda}0}$ が増えれば,年齢は大きくなる.宇宙定 数は物質とは逆に,膨張を加速する効果があるからである.

輻射優勢期では $ H(z) \simeq H_0 (1+z)^2 {{\mit\Omega}_{\rm r0}}^{1/2}$ である から,このとき式(3.6.72)は容易に積分され,

$\displaystyle t \simeq \frac{1.54 \times 10^{17}}{{{\mit\Omega}_{\rm r0}}^{1/2}...
...frac{4.89 \times 10^9}{{{\mit\Omega}_{\rm r0}}^{1/2} h} (1+z)^{-2}  {\rm yrs.}$ (C.6.74)

となる.同様に物質優勢期では $ H(z) \simeq H_0 (1+z)^{3/2} {{\mit\Omega}_{\rm
m0}}^{1/2}$ であるから

$\displaystyle t \simeq \frac{2.06 \times 10^{17}}{{{\mit\Omega}_{\rm m0}}^{1/2}...
...frac{6.52 \times 10^9}{{{\mit\Omega}_{\rm m0}}^{1/2} h} (1+z)^{-2}  {\rm yrs.}$ (C.6.75)

となる.

現在の年齢$ t_0$ は式(3.6.72)あるいは(3.6.73)1の積分の下限 を$ z=0$ とすれば得られる.アインシュタイン・ドジッター宇宙の現在の年齢 は $ 2/3\cdot {H_0}^{-1}$ である.単純なフリードマンモデルでは現在の宇宙 年齢は $ {H_0}^{-1}$ を越えることができない.歴史的には,これは星の年齢と 宇宙年齢の間に深刻な矛盾をもたらした.星の年齢が宇宙年齢よりも大きくなっ てしまうためである.現在では,この問題は宇宙定数の存在によって回避され ると考えられている.




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