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さて,スケール因子の力学的進化が与えられたので,前章で示されたいくつか
の距離の指標と赤方偏移の関係を,宇宙パラメータを使って具体的に表すこと
ができる.
まず,赤方偏移
に対応する実際の物理的な共動距離
を考える.こ
れは現在時刻での「実際の距離」である.この「実際の距離」は観測者から天
体までの光の測地線の長さを現在時刻において測るものである.そこで,この
光路を細かい線分に分解し,各々の線分は座標距離にして
の長さ
を持つものとする.これら線分の一つ一つの現在時刻での実際の距離は,現在
時刻でいっせいに光を使って時間を測る仮想実験を考えることにより与えられ
る.各線分を進むのに光のかかる時間を
とすれば,現在時刻
のRW計量から
の関係
が成り立つ.したがって,全体の共動距離は
|
(C.5.62) |
であることがわかる.さて、このような仮想的な光ではない、実際に天体から
出た光は時間をかけて進んでくるので,各点では、対応する過去の時刻のヌル
測地線
|
(C.5.63) |
に従う.これらにより,
|
(C.5.64) |
となる.ここで,
は時間に依存するハッブルパラメータで,
あらわに
,
の関数として表わせば,
|
|
|
(C.5.65) |
|
|
|
(C.5.66) |
である.
こうして得られた共動距離と赤方偏移との関係
を用いて他の距離の
関係も求めることができる.まず,座標距離
は式(3.5.62)を実際に
積分することにより
となる.ここで,座標距離を共動距離で表したときの関数形
を
定義した.この関数を使えば,座標距離と赤方偏移の関係は
|
(C.5.69) |
と与えられる.
前章において光度距離
,角径距離
は座標距離で与えら
れているので,次のようになる:
ここで,角径距離をスケール因子で割った,共動角径距離
を導入すると,これは座標距離に他ならないことがわかる.
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