キュムラントは式(15.2.32)-(15.2.35)のように,モーメン
トからいちいち再帰的に定義されているが,これらをもっと直接的に関係づけ
る強力な定理がある.それはキュムラント展開定理(cumulant expansion
theorem),あるいは結合クラスター定理と呼ばれるものである.この
定理によると,一般にランダム変数
について,次の等式が成り立つ:
証明は次の通りである.まず,式(15.2.36)から,一つの変数
につ
いての
次のモーメントをキュムラントで展開すると次のようになる:
キュムラント展開定理が非常に有用なのは,次に見るように,それが,モーメ
ントとキュムラントの母関数の間の関係を与えるからである.ランダム変数が
一変数
の場合,モーメント
の母関数は次のように定義さ
れる:
ランダム変数
の統計的情報は確率分布関数にすべて含まれているので,
そのラプラス変換であるモーメント母関数
にもやはり統計的情報がすべ
て含まれている.当然,母関数を解析接続した
は
のフーリエ
変換である.キュムラントがすべて与えられれば、式(15.3.55)からモー
メント母関数が決定するので、統計的情報が完全に定まることになる。つまり、
キュムラントの全体は統計的情報をすべて含んでいるのである。
ランダム変数の数が複数個ある多変数の場合への拡張は容易である.
種類
のランダム変数
,
について,モーメント母関数は
次式で定義される:
変数が連続場であって,無限個ある場合にも上と同様に考察できる.変数の自
由度が連続無限大となるため,母関数ではなく母汎関数を考えることになる.
モーメント母汎関数は次のように定義される.
モーメントはこの母汎関数の微分を取れば良いが,連続無限自由度をもつ変数
による微分は通常の微分を拡張したものであり,汎関数微分というものとなる.
これは,連続場
のある一点
における値を変化させたときの汎関数
の変化率のことである.具体的には,ある変分
における汎関数
の変化を
この汎関数微分を用いることにより,モーメントの表式は
上では,連続場の空間が1次元のように書いてあるが,もちろん,3次元空間
中の連続場などでも,同様である.宇宙論においては,密度ゆらぎ
の統計が扱われるが,これは3次元空間中の連続場である.
に注意すると,密度ゆらぎの場のキュムラント展開定理は次
の式で表される:
天体の分布のような離散的な点分布についての高次相関関数を与える母汎関数
を次に考えてみる.§15.1.2で考えたように、空間を微小体積
に分割して,その中の天体の数を
とすると,
のみ
である.この分割された空間で、式(15.2.44)で定義される、微小体
積
の個数のゆらぎ
を考えれば,離散分布の
相関関数は式(15.2.45)で与えられる。微小体積を無限小にした連続
極限においては、
は天体のある場所にデルタ関数が立ってい
るような、特異な場となる。実際、天体のある場所を
とすると、
この極限で式(15.2.44)は、
ここで、離散分布のモーメント母関数(15.3.71)を連続場と結び付ける
ため、天体の数密度を表す場を
としよう.この数密度場は質量の
密度場に比例するものとする.すなわちこれは§15.1.2で考えた,
バイアスのないポアソンモデルである.微小体積
の数密度の値を
とする.
式(15.3.71)を微小体積の和で表し直して、
キュムラントの全体は分布の統計的情報をすべて含んでいることに触れたが、 それに対応して、相関関数の全体は空間分布についての統計的情報をすべて含 んでいる。高次相関関数をすべて含む相関関数の関数形を与えれば、それは空 間分布の統計的性質を完全に指定したことになる。
たとえば、密度場の相関関数
がすべて与えられたも
のとすると、式(15.3.67)により、モーメント母汎関数
が定ま
るため、これにより、あらゆる統計的性質が導き出されることになる。天体分
布の相関関数は母汎関数
を汎関数微分することにより得ら
れるが、この汎関数は上で導いたように、式(15.3.78)によって密度ゆ
らぎの母汎関数
と結び付いている。このように、モーメント母汎関数は
分布の統計にとって基本的な量であり、空間分布から導き出されるどのような
統計量であろうとも、この母汎関数に帰着させることが原理的に可能である。
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