我々の宇宙は構造に満ちあふれている.前章までは宇宙の一様等方成分に着目 して見てきたが,完全な一様等方な宇宙にはいかなる構造もできようがない. 一方で,宇宙の背景放射の等方性から,光子の脱結合の時点では宇宙は極めて 一様であることがわかっている.すると,その時点から現在に至るまでに構造 ができてきたということになる.幸い,宇宙の背景放射には微小なゆらぎが観 測されているため,この微小なゆらぎは重力の働きによって成長することがで きるため,これが成長して現在の構造に至ったと考えるのが自然である.この ような重力によって構造が形成されたとする考え方を重力不安定説 (gravitational instability theory)という.この説は,現時点では定量的 に観測事実を説明することができ,標準的な考え方となっている.この章では, 重力不安定性説に基づく構造の形成を説明する.