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ここまでで重力場と(ミニマルに)結合した古典スカラー場がゲージ不変な形で
記述できたので,その量子化を行う.質量項の振る舞いを別にすれば得られた
ラグランジアンは本質的に平坦時空のスカラー場とほとんど変りはないので,
第8章で述べた場の量子化の手法をほぼ用いればよい.ただし,系
に時間並進不変性がないので、多少の拡張が必要である.いま、コンフォーマ
ル時間を時間変数にとるが、我々の定義ではコンフォーマル時間は長さの次元
をもっているので、
が適切な次元を持つ時間変数である。これに注意
して変数
の共役運動量を求めると,
 |
(K.2.45) |
となる.ここで
,
を場の演算子とみなし,場の量子化規則
| |
|
![$\displaystyle \left[u(\tau,{\mbox{\boldmath$x$}}), u(\tau,{\mbox{\boldmath$y$}}...
...eft[\pi(\tau,{\mbox{\boldmath$x$}}), \pi(\tau,{\mbox{\boldmath$y$}})\right] = 0$](img3530.png) |
(K.2.46) |
| |
|
![$\displaystyle \left[u(\tau,{\mbox{\boldmath$x$}}), \pi(\tau,{\mbox{\boldmath$y$}})\right] =
i\hbar \delta^3({\mbox{\boldmath$x$}}-{\mbox{\boldmath$y$}})$](img3531.png) |
(K.2.47) |
を適用すればよい.場の演算子を平面波展開すると
![$\displaystyle u(\tau,{\mbox{\boldmath$x$}}) = \int \frac{d^3k}{(2\pi)^3 2 k} \l...
...i{\mbox{\scriptsize\boldmath$k$}}\cdot{\mbox{\scriptsize\boldmath$x$}}} \right]$](img3532.png) |
(K.2.48) |
となる.ここでいま系の時間並進対称性が失われているから,基本モードは
の形にはならず時間成分は関数
で与えられる.ここ
で
である.基本モードは運動方程式の解の完全系からつくら
れるから,この関数は微分方程式
 |
(K.2.49) |
の解として求められる.時刻一定面における場のスカラー積を
![$\displaystyle \left(\phi_1,\phi_2\right) = -i \int d^3x \left[ \phi_1(\tau,{\mb...
...mbox{\boldmath$x$}})}{\partial\tau}\phi_2^*(\tau,{\mbox{\boldmath$x$}}) \right]$](img3536.png) |
(K.2.50) |
で定義すると,基本モードはこのスカラー積について直交する.ここでモード
関数の時間成分はもはや時間微分の固有関数ではないが,次のロンスキアン
 |
(K.2.51) |
で規格化すると,基本モードの規格直交性は次のようになる:
| |
|
 |
(K.2.52) |
| |
|
 |
(K.2.53) |
| |
|
 |
(K.2.54) |
したがって生成消滅演算子は基本モードの直交性から時刻によらずに
 |
(K.2.55) |
を満たすから,どの時刻で量子化しようとも
![\begin{displaymath}\begin{array}{l} \left[ a({\mbox{\boldmath$k$}}), a^\dagger({...
...$}}), a^\dagger({\mbox{\boldmath$k$}}') \right] = 0 \end{array}\end{displaymath}](img1826.png) |
(K.2.56) |
という交換関係になる.こうしてあとは通常のように真空を
により定義して,ここから生成演算子によりフォック
空間を構成すればよい.
このように量子化されたゆらぎの場が式(11.2.48)で与えられることに
なる.インフレーション模型においてはインフレーション前に存在した古典的
なゆらぎは空間の急激な膨張によりならされて消えてしまっていて,唯一現在
に引き継がれるゆらぎは場
の真空中での量子ゆらぎのみであると通常仮定
される.ここで場
の空間的フーリエ変換
![$\displaystyle \widetilde{u}(\tau,{\mbox{\boldmath$k$}}) = \int d^3x e^{-i{\mbox...
...a({\mbox{\boldmath$k$}}) + u_k^*(\tau) a^\dagger({\mbox{\boldmath$k$}}) \right]$](img3543.png) |
(K.2.57) |
により,真空期待値から導かれるゆらぎの空間的パワースペクトル
は
 |
(K.2.58) |
により得られる.交換関係(11.2.56)を用いてこれを計算すれば,
 |
(K.2.59) |
という結果を得る.
こうして,モード関数
の時間的振る舞いが量子ゆらぎの振幅を決めてい
ることがわかる.モード関数は短いスケールにおいては通常の平坦静止空間の
場の理論におけるものに一致するはずである.事実,
の極限では方程式(11.2.49)は
となり,
規格化(11.2.51)を満たす解は
 |
(K.2.60) |
で与えられる.一方,逆に長いスケールの極限
において
方程式(11.2.49)は
となりこれを積分
すると解として波数
に依存する係数を別にすれば
を得る.ここでインフレーション中,スロー
ロール近似が成り立つならばポテンシャルの傾き
と膨張率
はあ
まり変化せず,式(5.3.40)から
の変化も小さい
ので
のような振る舞いをする.したがって成長する解は前者で,後
者は減衰する.成長解のみ取り出せば漸近的に
 |
(K.2.61) |
の形となる.ここで
は初期条件から決まる関数であり,また減衰解を落
としてあるから,ロンスキアンの規格化は満たしていないがかまわない.この
場合,曲率ゆらぎ(11.2.41)のパワースペクトルは式
11.2.42)により
 |
(K.2.62) |
となり,時間
によらずに一定値をとる.このように,超ハッブルスケール
でスペクトルが時間変化しない曲率ゆらぎは便利な量である.その具体的なス
ペクトル形は漸近的な関数
を求めることにより与えられる.以下,スロー
ロール近似の一次近似の範囲で求める.
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