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スケール因子を除いたRW計量の空間部の3次元計量を
とすると,
RW計量は
|
(C.1.1) |
とかける.ここで,
,
,
,
という座標をとってあるとすると,
|
(C.1.2) |
であるが,この3次元計量は行列表示で
|
(C.1.3) |
であり,この記法で4次元計量は
|
(C.1.4) |
である.
このように計量を時間部分と空間部分に分けることにより,クリストッフェル
記号は比較的容易に計算できて,
となる.同様に曲率テンソルを求めることができるが,対称性からは明らかで
ない成分のみに限って結果を書き下せば,
さらにリッチテンソルは
また,スカラー曲率は
|
(C.1.8) |
となる.これらによりアインシュタインテンソルを求めれば,
となる.アインシュタイン方程式
|
(C.1.10) |
からただちにエネルギー運動量テンソルが
|
(C.1.11) |
という形しかとり得ないことがわかる.これは理想流体のエネルギー運動量テ
ンソルの形であり,
はエネルギー密度に,
は圧力に相当する.非等
方ストレスに寄与する粘性や熱伝導はいまの場合存在し得ない.これはわれわ
れが宇宙に一様等方性を課した結果,エネルギーや運動量の空間方向への流れ
が禁止されていることに対応している.すると,アインシュタイン方程式の時
間成分と空間成分は,次の2つの方程式となる:
これがRW計量を変数を力学的に規定するのアインシュタイン方程式であり,式
(3.1.12)を特にフリードマン方程式 (Friedmann
equation) という.これらと独立ではないが,保存則
の時間成分から,次の式が導かれる:
|
(C.1.14) |
式(3.1.12)を微分して式(3.1.13)から
を消去するこ
とによってもこの式は導かれる.この式は,物理的に物質のエントロピーが保
存することを表している.これを見るため,宇宙の膨張とともに膨らんでいく
共動体積
を考え,その体積中のエントロピーを
とする.
ここで
は単位体積あたりのエントロピーである.
この体積中のエネルギーは
で表される.さらにこの体積中に存在
する粒子種
の粒子数を
とする.ここで
は対応する粒子
の数密度である.この粒子の化学ポテンシャルを
とする.すると,温
度を
として,熱力学第一法則により
|
(C.1.15) |
となるが,この式の左辺第一項は式(3.1.14)からゼロである.したがっ
て,粒子数が保存して
が成り立っているときには共動体積中
のエントロピーが保存する.これは一様等方宇宙においては空間的に熱が流れ
ることがありえないため,断熱的にふるまうからである.
また,粒子数の保存しない反応が起きているとき
でも,化学ポテンシャルが小さく
が成り立っ
ていればやはりエントロピーは近似的に保存することになる.実際の宇宙の進
化に表れてくる様々な粒子については
程度になっていて,化学ポテンシャルは無視することが可能である.したがっ
て宇宙のエントロピーは保存すると考えてよい.
膨張宇宙では,ある共動体積に注目すると断熱膨張をしているため,必ずしも
その中で粒子のエネルギーは保存しない.ネーターの定理によれば,物質のエ
ネルギー保存則は時間についての系の並進対称性の現れである.いま,膨張宇
宙では物質にとってこの対称性がない.膨張宇宙ではエネルギーの代わりに,
物質のエントロピーが保存するのである.ただし,開いた系では一般に式
(3.1.15)左辺はエントロピーの微分ではない.この場合には後にみるよ
うに,化学ポテンシャルが粒子のエネルギーに比べて無視できないような異常
に強い相互作用をする粒子が生成消滅するような宇宙では,一般にはエントロ
ピーも保存しない.
さて,独立な方程式として,フリードマン方程式(3.1.12)と保存則
(3.1.14)の2つがある.曲率
と宇宙定数
が与えられれば,
未知変数は
,
,
の3つであり,このままでは解けない.これは宇
宙の中の物質を指定していないからである.この他に物質の状態方程式
があれば,それと保存則(3.1.15)からエネルギー密度とスケー
ル因子の関係
が求まり,さらにこれをフリードマン方程式
(3.1.12)へ入れれば,スケール因子の時間変化
が求められ
ることになる.ここで1階微分方程式を2度解くことになるので,境界条件が
2つ必要である.これは現在の変数の値
,
とすればよいが,スケール因子には規格化
を採用してあるの
で,
のみ指定すればよいことになる.これと曲率
と宇宙定数
の3つを与えれば一様等方時空の進化が一意的に定まることになる.
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