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拡散減衰

強結合近似が完全でないと高次の効果が重要になってくるが,それは光子の平 均自由行程のスケールであるから,このような高次の効果は比較的小スケール において顕著である.光子とバリオンの結合が十分でないと,光子は高密度領 域から低密度領域へ洩れだし,小さなスケールのゆらぎをならすことになる. これをゆらぎの拡散減衰 (diffusion damping),あるいはシルク減衰 (Silk damping)ともい う.この効果は観測的にも重要であるので,以下にその振る舞いを見積もって みる.

放射優勢期のホライズン内のゆらぎは圧力により密度ゆらぎが成長できず, 式(12.2.48), (12.2.55)により重力ポテンシャルは $ {\mit\Phi}
\propto a^{-2}$ のように急速に減衰していくので,発展方程式において無視で きるようになる.また,小スケールでは光子の時間的な振動スケールは宇宙膨 張の変化スケールよりも十分短いので, $ {\cal H}= a'/a$ の表れる項を無視するこ とができる.これらの近似において,式(12.6.303)から,

$\displaystyle v^{\rm (GI)}_\gamma = \frac{3}{4 k^2} {\delta^{\rm (GI)}_\gamma}'$ (L.6.320)

である.つぎに 強結合近似の1次近 似の式(12.6.304)の$ R$ 倍と式(12.6.312)を加えると

$\displaystyle v^{\rm (GI)}_{\rm b} = v^{\rm (GI)}_\gamma + \frac{\tau_{\rm c} R...
...^{\rm (GI)}_\gamma}' + \frac{\tau_{\rm c} R}{4(1 + R)} \delta^{\rm (GI)}_\gamma$ (L.6.321)

を得る.さらに,式(12.6.305)から,

$\displaystyle {\mit\Theta}_2 = -\frac{8}{45} \tau_{\rm c} k^2 v^{\rm (GI)}_\gamma = -\frac{2 \tau_{\rm c}}{15} {\delta^{\rm (GI)}_\gamma}'$ (L.6.322)

となる.これら1次近似の式を 式(12.6.286)と式 (12.6.294)の右辺に代入したものは2次近似の式となり,その辺々を加 えると,

$\displaystyle {\delta^{\rm (GI)}_\gamma}'' + \frac{k^2 \tau_{\rm c}}{3(1+R)} \l...
...) {\delta^{\rm (GI)}_\gamma}' + \frac{k^2}{3(1+R)} \delta^{\rm (GI)}_\gamma = 0$ (L.6.323)

を得る.ただし,$ R$ , $ \tau_{\rm c}$ の時間変化は光子の振動スケールよりも 十分長いため,これらの微分は落とした.この式で $ \tau_{\rm c}$ の項を落と せば,いま用いている近似において1次近似の方程式(12.6.316)と同じ ものになる.右辺第2項が強結合近似の2次の効果となっている.この微分方程 式の係数はゆっくりと変化することからWKB解を求めれば,

$\displaystyle \delta^{\rm (GI)}_\gamma \propto e^{\pm ikr_{\rm s}} e^{-k^2/{k_{\rm D}}^2}$ (L.6.324)

を得る.ここで

$\displaystyle {k_{\rm D}}^{-2} \equiv \frac16 \int \frac{\tau_{\rm c}}{1+R} \left( \frac{16}{15} + \frac{R^2}{1+R} \right) d\tau$ (L.6.325)

であり,減衰スケール$ k_{\rm D}$ よりも小さなスケールで急激に光子のゆら ぎが減衰していることがわかる.


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