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ここまでの議論から明らかなように、量子場とは無限自由度の量子力学である。
したがって、通常の量子力学と同様、場の理論においての量子系の時間発展の
記述に対し、シュレーディンガー描像 (Schrödinger picture)とハイゼンベルグ描像 (Heisenberg picture)という異なる見方がある。
シュレーディンガー描像では、場のハミルトニアン
が与えられたときに、
状態ベクトル
が時間発展し、その従う微分方程式は
シュレーディンガー方程式
 |
(H.6.272) |
である。ここで、上添字のSはシュレーディンガー描像であることを明示す
るために付けてある。このとき、物理量に対応する演算子
は陽に時間に依存することはない。このような量子的時間発展の表示をシュレーディンガー表示(Schrödinger representation)という。
一方、ハイゼンベルグ描像では、状態ベクトルは固定されたまま時間発展せず、
そのかわり系の時間発展は物理量に対応する演算子
の
時間発展によって表される。ここで、上添字のHはハイゼンベルグ描像を明示
するためにつけた。そのような演算子はすべて場の正準変数
の関数であり、その満たす微分方程式はハイゼンベルグ方程式
![$\displaystyle \frac{\partial\phi^{\rm H}}{\partial t} = \frac{i}{\hbar} \left[H...
...{\partial\pi^{\rm H}}{\partial t} = \frac{i}{\hbar} \left[H, \pi^{\rm H}\right]$](img1960.png) |
(H.6.273) |
である。このとき、状態ベクトル
は陽に時間に依存す
ることはない。このような量子的時間発展の表示をハイゼンベルグ表示
(Heisenberg representation)という。
量子化の基準時刻を
として、そのときの状態ベクトルを
とする。すると、シュレーディンガー表示で
の時間発展の式(8.6.272)の解は形式的に、
 |
(H.6.274) |
と表せる。また、同じ基準時刻での演算子を
とすると、ハイゼ
ンベルグ表示での時間発展の式(8.6.273)の解は形式的に
 |
(H.6.275) |
というユニタリ変換となることがわかる。すると演算子の期待値は表示によら
ず
 |
(H.6.276) |
となる。
自由場の時間発展を考えよう。まず、シュレーディンガー表示の場合、フォッ
ク空間の基底である
粒子状態が時間発展し、
 |
(H.6.277) |
となる。ここで、
は
粒子状態のエネルギー固有値である。したがって、
粒子状態は時間発展しても位相因子が変化するだけである。位相因子は観
測量に対応する確率振幅には無関係であり、依然時間発展した状態は依然
粒子状態のままである。したがって、自由場では粒子数の変化は起こらない。
ハイゼンベルグ表示では場の演算子が時間発展し、
![$\displaystyle \phi(t,{\mbox{\boldmath$x$}}) = e^{iHt/\hbar} \phi(0,{\mbox{\bold...
...size\boldmath$k$}}\cdot{\mbox{\scriptsize\boldmath$x$}}} \right] e^{-iHt/\hbar}$](img1970.png) |
(H.6.278) |
となる。この最後の表式は実スカラー場の場合を例に取って展開しているが、
他の場への拡張は全く自明である。る。ここで任意の演算子
についての
恒等式H8
![$\displaystyle e^{X} Y e^{-X} = Y + \left[X,Y\right] + \frac12 \left[X,\left[X,Y...
...]\right] + \frac{1}{3!} \left[X,\left[X,\left[X,Y\right]\right]\right] + \cdots$](img1973.png) |
(H.6.279) |
と交換関係
![\begin{displaymath}\begin{array}{l} \left[H, a({\mbox{\boldmath$k$}})\right] = -...
...k$}})\right] = k^0 a^\dagger({\mbox{\boldmath$k$}}) \end{array}\end{displaymath}](img1974.png) |
(H.6.280) |
を使えば、生成消滅演算子の時間発展が、
 |
(H.6.281) |
となることがわかる。したがって、場の演算子の時間発展は、実スカラー場の
場合
![$\displaystyle \phi(x) = \int \frac{d^3k}{(2\pi)^3 2k^0} \left[a({\mbox{\boldmath$k$}}) e^{ikx} + a^\dagger({\mbox{\boldmath$k$}}) e^{-ikx} \right]$](img1821.png) |
(H.6.282) |
となり、クライン・ゴルドン方程式を満たす古典場の解の係数
を演算
子
に置き換えたものと全く同じ形である。他の場の場合も全く
同様に、運動方程式を満たす古典場の展開における係数を生成消滅演算子に置
き換えたものと全く同じものとなる。このハイゼンベルグ表示では、場の生成
消滅演算子は各時刻ごとに異なるので、フォック基底も時刻ごとに構成される
ことになる。
さて、相互作用のある場合の時間発展はシュレーディンガー表示とハイゼンベ
ルグ表示の中間的な表示である、相互作用表示 (interaction
representation)が便利である。この表示では、まずハミルトニアンを自由部
分と相互作用部分に分けて、
 |
(H.6.283) |
と書けるものとする。ここで、基準時刻
でシュレーディンガー表示の場
の演算子に一致し、かつ自由ハミルトニアンによって時間発展するような次の
場の演算子
 |
(H.6.284) |
を定義する。ここで添字のSはシュレーディンガー表示の演算子を表している。
すると、場の任意の多項式で表される演算子
も同様の時間発展
 |
(H.6.285) |
をし、これは自由場のハイゼンベルグ方程式を満たす:
![$\displaystyle \frac{\partial{\cal O}}{\partial t} = \frac{i}{\hbar} \left[H_0, {\cal O}\right]$](img1982.png) |
(H.6.286) |
相互作用表示における状態ベクトル
の時間発展は、場の演算
子の期待値が表示に依らないという条件により決められる。式
(8.6.276)から、その条件は
 |
(H.6.287) |
である。すなわち、相互作用表示では、
 |
(H.6.288) |
である。ここで
と
は一般に非可換であることに注意する。これを時間
微分して従う微分方程式を求めると、
 |
(H.6.289) |
となる。相互作用ハミルトニアンが場の演算子の多項式であれば、その時間発
展は
 |
(H.6.290) |
となることを用いている。つまり、相互作用表示では、状態ベクトルは全ハミ
ルトニアンの相互作用部分をハミルトニアンとするシュレーディンガー方程式
にしたがって時間発展する。自由場に対しての相互作用表示はハイゼンベルグ
表示に一致することは明らかである。
Footnotes
- ...
恒等式H8
- これは
を
でテイラー展開すれば容易
に証明される。
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