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エネルギー・運動量テンソル

ある慣性系の中を質量のある粒子が動くとき,粒子と共に動く共動座標 で計った時間をその粒子の固有時という.光速を単位にした,単位固有 時あたりの粒子の座標の変化量 $ u^\mu = c^{-1}dx^\mu/d\tau$ を4元速 度といい, $ \eta_{\mu\nu} u^\mu u^\nu = -1$ を満たす.つまり4元速度は 粒子の世界線に沿った単位接ベクトルである.また,粒子の3次元速度ベクト ルを $ v^i = dx^i/dt$ とすると,一般の慣性系から見た4元速度の成分は

$\displaystyle (u^\mu) = \left( \frac{1}{\sqrt{1 - v^2/c^2}},\frac{v^i/c}{\sqrt{1 - v^2/c^2}} \right)$ (B.1.21)

である.粒子の共動座標系では $ (u^\mu) = (1,0,0,0)$ となる.粒子の静止質 量を$ m$ とすると,4元運動量は $ P^\mu = m c u^\mu$ で定義される.

物質の状態がエネルギーや運動量,圧力などが場所のなめらかな関数,すなわ ち流体で表せるとする.このとき,時空のある一点におけるエネルギー密度を $ T^{00}$ とする.また,空間座標成分$ x^i$ が一定の面を単位時間,単位面積 あたりに横切るエネルギーを$ cT^{0i}$ とする.運動量の$ i$ 成分の密度を $ T^{i0}/c$ とする.さらに,空間的なストレステンソルを$ T^{ij}$ とする.こ のとき, $ T^{\mu\nu}$ は対称2階テンソルとなることが示される.すなわち, エネルギー流の密度は運動量密度の$ c^2$ 倍に等しい.これをエネルギー・ 運動量テンソルと呼ぶ.外力が物質に働いていないとき,エネルギー保存則, および運動量保存則はまとめて

$\displaystyle \partial_\mu T^{\mu\nu} = 0$ (B.1.22)

と表される.外力 $ {\mbox{\boldmath $f$}}$ が働いていれば,4元力

$\displaystyle (f^\mu) = \left( \frac{{\mbox{\boldmath$f$}}\cdot{\mbox{\boldmath$v$}}/c}{\sqrt{1 - v^2/c^2}}, \frac{f^i}{\sqrt{1 - v^2/c^2}} \right)$ (B.1.23)

がこれに付け加わり,

$\displaystyle \partial_\mu T^{\mu\nu} = f^\nu$ (B.1.24)

となる.

この流体の微小体積を考え,そこに局所的な共動座標系をとる.この座標系で は局所的にエネルギーの流れあるいは運動量は消えるので, $ T^{0i} = 0$ とな る.また,この局所共動座標で $ T^{00} = \rho$ は流体のエネルギー密度を表 している.このような局所共動座標において等方的な流体を完全流体と いう.等方性はストレステンソルが $ T^{ij} = p \delta_{ij}$ の形で与えられ ることを要求し,$ p$ は圧力に対応する.完全流体においては熱伝導や粘性が ない.従って,完全流体のエネルギー・運動量テンソルの局所共動座標系の成 分は対角行列

$\displaystyle (T^{\mu\nu}) = \left( \begin{array}{cccc}\rho &&& 0 &p&& &&p& 0&&&p\end{array} \right)$ (B.1.25)

で与えられる.したがってこれを一般の慣性系で表すと,この流体の微小体積 の4元速度$ u^\mu$ を用いて,
$\displaystyle T^{\mu\nu}$ $\displaystyle =$ $\displaystyle (\rho + p) u^\mu u^\nu + p \eta^{\mu\nu}$ (B.1.26)
  $\displaystyle =$ $\displaystyle \rho u^\mu u^\nu + p P^{\mu\nu}$ (B.1.27)

となる.ここで、

$\displaystyle P^{\mu\nu} = \eta^{\mu\nu} + u^\mu u^\nu$ (B.1.28)

$ u^\mu$ の垂直方向への射影テンソルである.

一般の粘性流体においては空間成分に非等方ストレス $ \Sigma^{ij}$ が付け加 わり,式(B.1.25)は

$\displaystyle (T^{\mu\nu}) = \left( \begin{array}{cccc} \rho & 0 & 0 & 0 0 &p...
...igma^{23} 0 & \Sigma^{31} & \Sigma^{32} & p + \Sigma^{33} \end{array} \right)$ (B.1.29)

となる.ここで,非等方ストレスはトレースレス $ {\Sigma^i}_i = 0$ である. トレース部分は圧力の等方成分ですでに表されている.これも同様に一般の座 標で書き表すと,
$\displaystyle T^{\mu\nu}$ $\displaystyle =$ $\displaystyle (\rho + p) u^\mu u^\nu + p \eta^{\mu\nu}
+ \Sigma^{\mu\nu}$ (B.1.30)
  $\displaystyle =$ $\displaystyle \rho u^\mu u^\nu + p P^{\mu\nu}
+ \Sigma^{\mu\nu}$ (B.1.31)

となる.ここで,非等方ストレステンソル $ \Sigma^{\mu\nu}$ はトレースなし で4元速度に垂直成分のみを持つ対称テンソルである:

$\displaystyle {\Sigma^\mu}_\mu = 0, \quad \Sigma^{\mu\nu} u_\nu = 0,\quad \Sigma^{\mu\nu} = \Sigma^{\nu\mu}$ (B.1.32)


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