次へ: 高次相関関数
上へ: 天体分布の相関関数とパワースペクトル
前へ: 連続的な密度ゆらぎとの関係
目次
索引
天体分布のパワースペクトル
パワースペクトルについても同様に,離散的な点分布からどのように求められ
るかを考えてみる.まず,銀河が
,
という
場所にあるとする.このような離散的な分布のフーリエ変換は
 |
(O.1.15) |
であり,これが観測量に対応する.ここで,この観測量によってゆらぎに対応
する量を定義するため,上式の平均値が何か調べてみる.
そのために,観測されている空間全体の体積
を微小体積に分けること
により,式(15.1.15)は
 |
(O.1.16) |
と表せる.ここで,
は
にある微小体積
の中に入
る銀河の数である.微小体積は十分小さく,
のみをとる.ここで
は簡単のために,銀河は一様にサンプリングされているものと仮定し,銀河の
平均数密度
は空間的に一定とする.このとき,観測される体積の中で
は1,外では0をとるウィンドウ関数
を定義する:
 |
(O.1.17) |
すると,式(15.1.16)の平均値は
 |
(O.1.18) |
である.ここで,
はウィンドウ関数のフーリエ変換
である.したがって,ゆらぎに対応する観測量は,
 |
(O.1.19) |
である.これも観測量であり,ここから,銀河分布のパワースペクトルを次の
ように定義する:
 |
(O.1.20) |
こうして定義された離散的な分布についてのパワースペクトルが連続的な密度
分布のパワースペクトルとどのように結び付いているかを調べる.そのために
まず,式(15.1.16)の絶対値の2乗の期待値を評価してみると,
となる.これと式(15.1.18)により,上で定義した離散的なパワースペ
クトルの期待値は
となる.これが離散的な分布と連続的な分布のパワースペクトルを結ぶ基本的
な式である.左辺は仮想的な宇宙について平均されたアンサンブル平均なので,
実際には観測量そのものではない.実際の観測ではこれからのずれが生じるこ
とになる.このようなずれをコズミックバリアンス(Cosmic variance)
という.このような不定性を最小限に押えるために,実際の観測では,
の方向について平均をとり,さらに
をいくつかの領
域に分けて平均するということが行われる.これによりアンサンブル平均を行
うのに似た効果が加えることができる.
フェアサンプル仮説により,見ようとするゆらぎのスケールに比べて観測体積
が無限に広い極限
では,観測的に決められる量
はアンサンブル平均をした式(15.1.22)に近付いて行く.
ここで,観測体積が無限大の極限
をとると,
 |
(O.1.23) |
となり,さらに,
 |
(O.1.24) |
に注意すると,
![$\displaystyle \left\vert\widetilde{W}({\mbox{\boldmath$k$}})\right\vert^2 \righ...
...^3({\mbox{\boldmath$k$}})\right]^2 = V (2\pi)^3 \delta^3({\mbox{\boldmath$k$}})$](img4421.png) |
(O.1.25) |
となる.体積無限大の極限
では,式(15.1.20)で
定義した離散的な分布のパワースペクトルは観測体積が実質的にアンサンブル
平均をしたものに帰着することも考慮して,
 |
(O.1.26) |
となることがわかる.第2項は分布の離散性から来ていて,ショットノイズ項
である.この式はちょうど,式(15.1.14)のフーリエ変換になっている
ことがわかる.
観測体積が十分大きくなければ,ウィンドウ関数のフーリエ変換はもはやデル
タ関数ではなく,
のまわりに有限の幅をもってぼやけた関数となる.こ
こで,観測される離散的なパワースペクトルは式(15.1.22)のように
理論的な密度ゆらぎをウィンドウ関数によってフーリエ空間で畳み込んだもの
となっている.いいかえれば,観測されるパワースペクトルは理論的なパワー
スペクトルを3次元的にある固定した幅でならしたものになっている.ここで,
大スケールのゆらぎに対応する
の絶対値の小さなモードは,波数空間にお
ける体積が小さいため,完全にならされてしまう.このため,大スケールのゆ
らぎは正確に求まらないことになる.これは,もともと,観測体積よりも大き
なスケールのゆらぎを求めることができないことに対応している.
次へ: 高次相関関数
上へ: 天体分布の相関関数とパワースペクトル
前へ: 連続的な密度ゆらぎとの関係
目次
索引
Copyright©2004-2010Takahiko Matsubara, All rights reserved.
visitors,
pageviews since 2007.5.11