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インフレーション理論と初期ゆらぎ

宇宙の構造はすべて初期ゆらぎに起源を持つので、これがどのように生成され たのかはたいへん興味のあるところである。現在のところ、これに対する確実 な答えは存在しないが、インフレーション理論の枠組みの中で初期ゆらぎを生 成する機構があり、現在有望な可能性として研究されている。インフレーショ ン理論自体は宇宙論にとってさまざまな好ましい性質があるとはいえ、まだ確 立した理論とはいえず、そもそもインフレーション自体が 確実にあったと決まっているわけではない。もしあったとしても具体的にどの ような場がインフレーションを起こしたのかはまったく確定していない。この ため初期ゆらぎを一意的に予言できるわけではないが、多くのインフレーショ ンモデルにおいては、生成されるゆらぎについて比較的普遍的な性質を予言す る。インフレーション理論における初期の密度ゆらぎの生成の定性的な概略は § 5.3.3で述べたが、インフレーション中におけるインフラト ン場の量子ゆらぎが古典化することにより初期ゆらぎがつくられる.ここでは このゆらぎの生成機構についてさらに定量的な詳細を扱う。初期ゆらぎは宇宙 の背景放射のゆらぎや、大規模構造などによって直接観測的に確かめることが できる。 したがって、インフレーション理論がどのような初期ゆらぎを生み出すのかを 定量的に知ることは、より直接的な観測によってインフレーションモデルを確 かめることにつながり、初期宇宙を実証的に知るためのたいへん重要な手段となる。




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