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理論物理学研究所の思い出

もう伝説と化してしまった感があるが、広島大学理論物理学研究所という 今は存在しない研究所が、1990年まで実在した。広島市から電車に揺られて数 時間もかかる環境の良い(そして辺鄙な)地にあって、錚々たるメンバーによ り素粒子論、相対論、宇宙論などの浮世離れした純理論的研究が行われるとい うユニークな場所だったのである。私は大学院1年のときに所属したのだが、 所属研究室は「時間空間研究部門」という、いい意味でヤバい名前の部門であっ た。ヤバいのは名前だけで、実際には正統的な素粒子論であった。このヤバい 名前はいまは京大の基礎物理学研究所のなかで受け継がれているが、ぜひずっ と残してもらいたいものである。私が入学後、数ヵ月でこの研究所は基礎物理 学研究所に吸収合併されてしまい、私は最後の学生のひとりとなってしまった。 基礎物理学研究所に組み込まれていくまでの過渡期の微妙な時期を経験したが、 理論物理学研究所が存命中のときの思い出は実はあまりなく、この項に書くこ ともあまりない(なんじゃそりゃ)。

理論物理学研究所の大学院出身者のアカデミックポストへの就職率は異常 に高い。その競争率は20倍以上ともいわれるが、この研究所からは約2人に 一人がアカデミックポストへの職を得ている。その結果、とくに相対論、宇宙 論の分野では、ポストの数そのものが少ないこともあり、日本のアカデミック ポストのうちかなりの割合を占めている。広島のはずれの辺鄙な地にあって、 ハングリー精神を養っていたこのユニークな研究所をなくしたのは惜しいこと である。

とりあえず、数少ないリンクのみ。

冨田先生の理論物理学研究所ホームページ

基研のホームページの中の説明


Takahiko Matsubara
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