観測的宇宙論の話題

松原隆彦 (名古屋大学)

宇宙論はいま、実証的な科学として大きく進展しようとしている。観測の進展
は近年特に凄まじく、驚くべき結果が次々と発表されている。さらにはこれま
でにないスケールのプロジェクトが次々に実行に移されつつあり、それは宇宙
がどのようにして生まれたかという人類の究極的な疑問について、より直接的
な観測に基づいた研究を可能にするものである。これまで理論主導の比較的ア
カデミックな分野であった宇宙論は、大幅な観測データの量的かつ質的な革新
によってそのスタイルを変えつつあり、今後も大きく変容していくことはほぼ
間違いないであろう。その結果我々はどのような宇宙像を手にしていくのだろ
うか。あるいはそもそも我々は何を知りたいのであろうか。この講演では、最
近の観測的宇宙論の進展を振り返ると共に、そのトレンドおよび行く先を、個
人的見解を交えながら考察してみたい。