「宇宙論における非線形構造形成」

宇宙初期に生成された初期ゆらぎの振幅は十分に小さく、初期段階におけるそ
の力学進化は線形近似によって十分に記述できる。線形近似ではゆらぎの発展
がフーリエ・モードごとに独立に進化するため、理論的な解析も比較的容易で
ある。ところが、現在の宇宙は小さな波長スケールほど極度な非線形性を持っ
ているし、また、精密なレベルでの観測が可能な現代の宇宙論では、初期宇宙
や大きな波長スケールにおいても非線形性の効果が重要な情報源として用いら
れている。現在の宇宙で我々に観測可能な量には多かれ少なかれ非線形性の影
響が入り込むため、精密な宇宙論的解析には非線形効果の理解が欠かせない。
本講演では、宇宙論における非線形構造形成の基礎的事項の解説から始め、最
近の関連するトピックなどについて解説する予定である。