「ランダム場の統計宇宙論」 松原隆彦 宇宙論において、宇宙マイクロ波背景放射や銀河空間分布など、広い領域のサー ベイ観測は宇宙全体の情報を得るための重要な観測手段となっている。こうし た観測量は2次元や3次元のランダム場とみなされ、具体的な観測値そのもので はなく、その統計的性質が本質的な情報を持つ。よく用いられる単純な統計量 にパワースペクトルや相関関数があるが、これらが解析できるのはランダム場 に含まれる統計的情報の一部に過ぎない。一方、ランダム場の幾何学的形状に 着目した統計手法として、ピーク統計、ジーナス統計、ミンコフスキー汎関数 などが知られ、宇宙論においても様々に応用されてきた。これら幾何学的手法 と宇宙論のつながりを明らかにするには、宇宙論的摂動論を元にした一般的な 解析的研究が有用である。この問題に対する最近の進展をお話しする。