「宇宙の大規模構造における摂動論とバイアス」
("Perturbation theory and biasing in the large-scale structure of the universe")

宇宙の大規模構造は、さまざまな宇宙論モデルに観測的な制限を与える有力な
手段として、近年ますますその重要性を高めている。史上最大の銀河サーベイ
である Sloan Digital Sky Survey の観測が完了し、これを用いてダークエネ
ルギーモデルや初期ゆらぎ非ガウス性、修正重力理論などへの制限がつけられ
た。これを受けて、宇宙論をターゲットとする、さらに大規模な銀河サーベイ
が多数計画されている。

この背景のもと、大規模構造の観測量を精密に理解・記述することが理論的課
題となっている。特に精密宇宙論においては、大スケールといえども非線形効
果が無視できず、ゆらぎの非線形摂動論が再び興味を集めている。これまでの
単純な摂動論では、質量密度ゆらぎの非線形性だけが扱われてきた。だが観測
量の記述には、赤方偏移空間変形および銀河バイアスという非線形プロセスの
理解が必要不可欠である。今回のセミナーでは、はじめに大規模構造における
摂動論の周辺を概観し、次に実際の観測量を予言するため伝統的な摂動論を拡
張して、バイアスと赤方偏移空間変形の非線形過程を扱う一般的な枠組みを考
える。