ところがそのような単純化によっても、重力場は簡単には量子化で きない。そういうときにはまず、時空の次元を減らしたモデルを研究 し、量子重力の本質を見抜くことが必要であろう。それが3次元量子 重力を考える意味である。
本論文の後半においては、3次元格子重力の量子化の問題を述べた。 この問題の興味深いところは、それが角運動量の理論に現われる 6j-symbolとの結びつきが存在するところにある。6j-symbol(正しく はq-変形された6j-symbol)の性質を巧みに用いることにより格子時空 上に位相不変量を構成できることが、最近TuraevとViroにより証明さ れたのだが、その量は重力場の量子論的分配関数と見なせるらしいこ とがわかっている。Turaev-Viroによる不変性の証明は、数学的に少々 込み入っている。その理由は、証明の手段としてAlexander移動という ものを用いたことにある。ところが最近、数値計算に関連して用いら れていた $(k,l)$ 移動というものが、Alexander移動と等価であるこ とが明らかになった。そこで、本論文において、$(k,l)$ 移動を用い てTuraev-Viro不変量の不変性の証明を行なった。その結果、証明は非 常にすっきりしたものになることがわかった。さらに不変性の本質は、 6j-symbolの2つの性質にあることがはっきりした。これは、時空の分 割によらない量を作るのに必要不可欠の性質であり、この性質をもつ ものさえあれば、4次元に対しても同様な量が作れることがわかった。