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重力レンズ効果
上で見たように,質量なし粒子が膨張宇宙を進んでいくときのエネルギー変化
に対して,ザックスヴォルフェ効果は宇宙のゆらぎの影響を表している.一方,
この粒子に対するゆらぎの影響はエネルギーに対するもののみではなく,粒子
の運動経路も変化させる.この結果,この粒子によって観測される天体の位置
は,ゆらぎがない場合とは異なる位置に観測されることになる.これはちょう
ど重力ポテンシャルが粒子の経路を曲げることに相当し,宇宙のゆらぎがレン
ズの役割をする.この効果は重力レンズ効果(Gravitational lens
effect)
と呼ばれている.
摂動宇宙での重力レンズ効果を調べるため,摂動計量を用いた測地線方程式の
空間成分の式(13.1.17)から出発する.粒子の経路変化に対し,観測
される重力レンズ効果は天球面上に投影された成分である.そこで,3次元空間
の座標として観測者を中心とする球座標
を
考えると便利である.その非摂動計量はRW計量(2.3.22)の空間部であ
り,
|
(M.3.29) |
と書くことができる.ただしこの式および以下では
を角方
向
のいずれかを表す添字とし,さらに
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(M.3.30) |
は球面の計量である.この記法により3次元クリストッフェル記号
を動径方向
と角度方向
に分けて計算すると,
|
|
|
|
|
|
|
(M.3.31) |
となる.ここで,
は計量
から導かれ
る球面の2次元クリストッフェル記号である.また,式(13.1.13)はい
ま,
|
(M.3.32) |
となる.これらにより,式(13.1.17)の角成分を計算すれば,
|
(M.3.33) |
となる.ここで,
だから,
とおいた
式(13.1.8)により非摂動レベルの測地線上で,
が成り立つ.摂動レベルでは測地線の摂動
について
|
(M.3.34) |
が成り立つ.ここで、
は測地線に沿った動系方向のラグランジュ微分
である.これらのことから式(13.3.33)は
|
(M.3.35) |
と変形される.いま,角方向の測地線の摂動を表す新しい変数として,
|
(M.3.36) |
を導入すれば,方程式が
|
(M.3.37) |
という形になる.この方程式は左辺第3項を非斉次項とする2階線形微分方程式
であり、式(12.6.317)で構成したグリーン関数の方法によって一般解が
求められる.斉次方程式
の独立な2解は
,
であるから,一般解は
|
(M.3.38) |
となる.ここで積分の
の中は
上での値である.
a
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