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天文学的単位について

宇宙論で用いられる物理量のスケールは日常的なスケールとはかけ離れている ため,通常物理で用いる単位を用いると文字どおり天文学的数字がいたるとこ ろに表れてしまい,あまり便利ではない.このため,通常天文学的スケールで 定義された単位が用いられている.ここでは宇宙論で用いられる天文学的単位 について説明しておく.ここでは数値はすべて有効数字4桁で表してある.よ り正確な数値は付録 A.2を参照せよ.

長さ

宇宙論で用いられる長さの単位はpc (パーセク, persec)である.これはもともと地球が太陽の回りを公転 するときに星のみかけの位置がその星までの距離に応じて動いて見える現象を 利用し,三角測量の原理によってその星までの距離を測るときに用いられた距 離の単位である.一年間で地球が一回公転すると,星の見かけの位置は背景の十分 遠い星々に対して移動するく.地球の公転面に垂直な方向にある星は円を描 き,公転面上にある星は直線上を往復し,公転面からななめの方向にある星 は一般に楕円形を描く.この楕円の長軸方向の角度は星までの距離に反比例す る.この長半径の角度がちょうど1秒となるときの距離を 1pc と定義する.こ の距離は光が1年かかって進む距離,光年を単位にすると約3.26光年に対応し, メートルで表すと $ 3.086\times 10^{16} \mathrm{m}$ に対応する.

宇宙論に表れる距離はpcでもまだ小さすぎるため, $ 10^{6}\mathrm{pc}$ を表 すMpc (メガパーセク)がよく用いられる:

$\displaystyle \mathrm{Mpc} = 10^6 \mathrm{pc} = 3.086 \times 10^{22} \mathrm{m}$ (A.2.1)

この他にもキロパーセク $ \mathrm{kpc} = 10^3 \mathrm{pc}$ , ギガパーセク $ \mathrm{Gpc} = 10^9 \mathrm{pc}$ も使われる.現在我々に観測可能な宇宙 の半径の目安は約 $ 4 \mathrm{Gpc}$ である.

時間

宇宙論においては初期の宇宙では現象の進行がかなり速く,後期になるにつれ 非常に遅くなっていくので,秒 (s),分 (min),時 (hr),日 (day), 年 (yr) などが状況に応じていずれも用いられる.比較的現在の宇宙年齢を表すのに 良く使われるのは10億年を表す Gyr (ギガイヤー)である.これは秒 (s)で表 すと,

$\displaystyle \mathrm{Gyr} = 3.156 \times 10^{16} \mathrm{s}$ (A.2.2)

である.現在の宇宙の年齢は約 $ 14 \mathrm{Gyr}$ である.

質量

銀河や銀河団など,宇宙の構造に対する質量の単位として通常用いられるのは 太陽質量$ M_\odot$ である.これは,kgで表すと

$\displaystyle M_\odot = 1.988 \times 10^{30} \mathrm{kg}$ (A.2.3)

となる.




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