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光の伝播の途中で吸収がない理想的な場合,天体そのものの光度
(luminosity)
と我々が観測する見かけの天体の明るさ
は比例する.こ
こで,
は天体の静止系において単位時間あたりに放出される全エネルギー
であり,
は単位面積,単位時間あたりに観測者が受けるエネルギーであり,
これを観測者の位置でのフラックス (flux) という.静止ユークリッド空間で
の関係は
|
(B.5.30) |
であるが,RW計量では膨張と曲率の効果により,この関係は変更を受ける.
まず,赤方偏移によって光のエネルギーが小さくなる.そこで,光源において
波長範囲
の中に放出されるエネルギーを
とする.ここで,
は全放出エネルギーであ
り,
はエネルギー分布を表す関数で,規格化
|
(B.5.31) |
を持つ.光源から,波長範囲
,時間
範囲
の間に放出されるエネルギーは
|
(B.5.32) |
である.1光子あたりのエネルギーは
であるから,その
光子数は
|
(B.5.33) |
である.ここで,対応する光を観測者が観測するときの波長
,時
間間隔
は赤方偏移によって,
,
となるので,式(2.5.33)は
|
(B.5.34) |
と表される.光源からRW計量の座標距離
にある球面の面積は
で
ある(そうなるように座標距離が定義された).したがって,観測者が単位面積,
単位時間あたりに受けるエネルギーは
|
(B.5.35) |
であるから,観測者の位置でのフラックスは,
|
(B.5.36) |
である.
放射の全エネルギーを測る抵抗熱量計のことをボロメータ (bolometer) とい
う.ボロメータによって測定したエネルギーは全波長で積分したフラックスに
対応するので,これをボロメトリックフラックス (bolometric flux)と言い,
|
(B.5.37) |
で与えられる.また,天体から放出される全エネルギーはボロメトリック光度
に対応し,
|
(B.5.38) |
である.したがって,これらの関係はよりシンプルに,
|
(B.5.39) |
となる.このボロメトリックな量を用いて,あたかも静止ユークリッド空間で
あるかのように天体までの距離を見積もったものを,光度距離(luminosity distance)
という:
|
(B.5.40) |
さて,フラックスを対数スケールで表したものは伝統的な等級 (magnitude)
である.ボロメトリックな見かけの等級は
|
(B.5.41) |
で与えられるB1.ここで,
|
(B.5.42) |
は等級がゼロに対応するフラックスである.また,ある天体が10pcの距離にあっ
たとしたときの見かけの等級は絶対等級と呼び,ボロメトリックの場合
|
(B.5.43) |
で与えられる.これらの等級を用いれば,光度距離は
|
(B.5.44) |
となる.したがって
は光度距離と一対一の関係にあるため,これを
距離指数 (distance modulus) と呼び,以下のような式で与えられる:
全光度を測定しない,あるいはできない場合は波長の範囲を限定した観測とな
り,上のようなシンプルな式には補正が必要である.これをK-補正
(K-correction)と呼ぶ.あるバンドBandに限定した観測を行うことを
考えてみる.このときのフラックスは
|
(B.5.46) |
で与えられる.この天体が10pcにあるとしたときのフラックスは
|
(B.5.47) |
であるから,このバンドでの距離指数は,
|
(B.5.48) |
となる.ここで,
がK-補正であり,
|
(B.5.49) |
で与えられる.これは天体のスペクトル分布
を知ることにより計
算できる.
Footnotes
- ...
で与えられるB1
-
は10の対数
である.
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