次に宇宙原理と呼ばれるものを導入する.これは次の仮定である:
宇宙原理を満たす計量を考えるのには,まず2次元空間について考えるとわか
りやすい.球の表面は曲率が正の一様等方な2次元面をなす.球の半径を
とするとき,曲率は
で定義される.
球の北極点を球面上の原点Oとして,適当な方向からの角度
と原点か
らの測地的距離
によって2次元極座標を張ることができる.このとき,点
からOと球の中心を結ぶ直線上へ降ろした垂線の距離を
とすれ
ば,
である(図2.1).
この2次元の定曲率空間の計量を足がかりにして3次元定曲率空間の計量が構成
できる.まず,3次元空間の中に任意に原点をとって極座標
を張って,その線素を
とする.等方性より動
径座標
が一定の面は一様な球面を構成する.さらに,動径方向の座標とし
て,この球面の面積が
となるようにとることにしよう.この座標は
2次元の場合同様,空間が曲がっている場合には実際の距離とは異なるが,計
量としては簡単な形となる.こうして,この球面上の線素は
となる.また,動径方向と角座標
方向
は垂直である.そうでなければ動径方向の角度方向への射影が非等方性を生む
ことになってしまう.したがって
でなければならない.以上により,空間の等方性により計量として次の形に制
限できることがわかる:
座標変換の自由度を別にすればこの計量以外には一様等方性を満たす計量はな
い.これを見るには,3次元の曲率テンソル
の形が一様等
方性からどのようなものでなければならないかを考えるとよい.空間に特別な
方向がないことから,これは3次元計量テンソル
のみを用いて表
されなければならない.もし何らかの他のベクトルやテンソルで表せるとする
と,そのベクトルやテンソルが空間に特別な方向を定義してしまうからである.
すると,曲率テンソルの添字の対称性(B.2.63)-(B.2.66)を
満たすものとしては,次のものしかない:
上の計量(2.2.15)において,曲率
がゼロでなければ,原点からの測地的
距離は
ではないことは2次元の例からも明らかであろう.動径座標
一定
の面の面積は
となるが,これは曲率がゼロのときのみ
が実際の
測地的距離となることを示している.ゼロでない曲率が存在する場合は,動径
座標一定の球面の面積が
となるように動径座標を定義したことにな
る.