任意の慣性系においては時間座標 および3次元空間のデカルト座標 を張ることができるが,これをまとめて と対応させ,この座標を一般的に で表す.ここで, は 光速である.また, である.今後,断らない限り一般的にギ リシャ文字 などの添字は をとるものとする.また, ラテン文字 は空間成分 のみをとるものとする.例えば はこの慣性系の空間座標を表す.このとき,座標の値が だけ離れた2点の時空間隔 を
光速度が観測者の運動状態にかかわらず一定であることが特殊相対論の出発点 であるが,これは時空間隔(B.1.1)がある慣性系 から別の慣性系 へ移っても不変であることを要求する.すると,この2つの座標成 分同士の関係は線形でなければならないので,原点を共通にとって
時間反転やパリティ変換のように時空の符号を換えるようなものを除けば,ロー レンツ変換は空間座標の回転とブーストで表される.ブーストとはある座標系 から相対的に一定の速度を持つ別の座標系への変換である.例えば, 軸方 向への速度 のブーストはよく知られた次の形となる.
無限小ローレンツ変換は6個の成分を持つ 反対称行列
ローレンツ変換に対して値を変えない量をスカラー(scalar)と呼ぶ。ま た、4元ベクトル は4つの成分を持ち,ローレンツ変換のもと で のように変換するものとして定義される:
任意の4元ベクトル に対して,下つき添字のベクトル を定義する.すると内積は などと表すこ とができる.下つき添字のベクトルは次のように変換する:
2つのベクトルの積 と同じ変換をするものを2階テンソル という.すなわち,2階テンソル は
さて, 階のテンソルにおいて上下2つの添字の対をとって和をとると,残 りの添字について 階のテンソルとなる.例えば は2階のテンソルとなる.これをテンソルの 縮約という.
微分 は下つき添字の4元ベ クトルである.したがって, 階テンソルに作用すれば 階テンソルを つくる.
計量 は下つきの2階テンソルである.この計量テンソルはク ロネッカーデルタ
高階テンソルは、添字の交換に対して対称性を持つようなテンソルが有用な場 合がよくある。例えば、2階テンソル に対して添字の交換をして も同じ値をもつテンソル、および符号のみが反転するテンソルを次のように作 ることができる:
ある慣性系の中を質量のある粒子が動くとき,粒子と共に動く共動座標 で計った時間をその粒子の固有時という.光速を単位にした,単位固有 時あたりの粒子の座標の変化量 を4元速 度といい, を満たす.つまり4元速度は 粒子の世界線に沿った単位接ベクトルである.また,粒子の3次元速度ベクト ルを とすると,一般の慣性系から見た4元速度の成分は
物質の状態がエネルギーや運動量,圧力などが場所のなめらかな関数,すなわ ち流体で表せるとする.このとき,時空のある一点におけるエネルギー密度を とする.また,空間座標成分 が一定の面を単位時間,単位面積 あたりに横切るエネルギーを とする.運動量の 成分の密度を とする.さらに,空間的なストレステンソルを とする.こ のとき, は対称2階テンソルとなることが示される.すなわち, エネルギー流の密度は運動量密度の 倍に等しい.これをエネルギー・ 運動量テンソルと呼ぶ.外力が物質に働いていないとき,エネルギー保存則, および運動量保存則はまとめて
この流体の微小体積を考え,そこに局所的な共動座標系をとる.この座標系で は局所的にエネルギーの流れあるいは運動量は消えるので, とな る.また,この局所共動座標で は流体のエネルギー密度を表 している.このような局所共動座標において等方的な流体を完全流体と いう.等方性はストレステンソルが の形で与えられ ることを要求し, は圧力に対応する.完全流体においては熱伝導や粘性が ない.従って,完全流体のエネルギー・運動量テンソルの局所共動座標系の成 分は対角行列
一般の粘性流体においては空間成分に非等方ストレス が付け加 わり,式(B.1.25)は