visitors, pageviews since 2007.5.11
サイトナビゲーション:

宇宙論よくある質問

質問

宇宙は光速よりも速く膨張しているのですか?
もしそうなら、それは物理学の基礎原理に矛盾しているのではないですか?

答え

遠くの物は光速よりも速く遠ざかっています。相対性理論をすこし知っている方は、光速よりも速いものはないはずなのに、それはおかしいと思うかもしれませんが、これは相対性理論と矛盾してはいません。相対性理論で禁止されているのは、ある出来事の情報が光速以上で他の場所に伝わって何らかの結果を及ぼすようなことで、このようなことがありえないことを「相対論的な因果律」といいます。この原則が破れると相対性理論では時間を逆行することができることが示され、結果が原因の前に来るという、全くおかしなことになります。現在の物理学では、基礎原理として相対論的な因果律は破れてはならない原則とされています。

膨張宇宙では遠くの天体はそこまでの距離に比例した速度で遠ざかっています。すると十分遠くの宇宙の速度はどうしてもいずれ光速以上になる必要があります。そうでなければ宇宙全体が一様に膨張することはできません。ここで、空間が全く静止した状態で銀河の相対速度だけが光速を越えるならば、上述の相対論的因果律に矛盾するのですが、膨張宇宙とはそういうものではなく、空間自体が膨張しているのです。単に銀河が相対的に遠ざかるということと、空間そのものが膨張するということとの間には大きな違いがあり、空間の膨張の場合、距離の膨張率が光速を越えてしまうような遠方の場所からはどのような方法によっても信号が届くことがなく、全く観測不可能な場所になります。このため、物理学の基本原理である相対論的因果律にはなんの問題もありません。

光速を超えるものは存在しない、というのは物体に適用されることであって空間の膨張には当てはまりません。正確に言えば、光速を超えて情報が伝わってはならない、という言い方の方がより正しいのです。固定された空間の中で物体が光速を超えれば、必然的に情報が光速を超えてしまうので、光速という速度制限を受けます。しかし、空間自体が光速を超えて膨張したところで、光速を超えて情報が伝わるわけではないのです。このため、空間の膨張は光速という速度制限を受けないのです。

この正しい理解をしていれば、遠方の銀河までの距離が光速を越えて増えていると言われたからと言って、驚く必要はありませんね。



Copyright©2006-2007 TMCosmos, All rights reserved.
[UP] [HOME]